タレントの坂上忍(53)が司会を務めるフジテレビの『バイキングMORE』。この秋、『バイキング』とその後番組の『直撃LIVEグッディ!』が合体し、誕生した番組だ。
「この合体戦略が、フジテレビの成功体験になるのでは」
そう指摘するのはライバル局のプロデューサーである。成功体験、というほどの果実が視聴率に現れているわけではないが、テレビ局の裏事情と合わせると、はやり成功と映るようだ。前出・プロデューサーが続ける。
「ふたつの番組をひとつにすれば、丸々半分とはいかないまでも、2割~3割程度の経費削減になる。以前の『バイキング』はバラエティー班が作っていましたが、今は『グッディ!』を担当していた情報制作班が仕切っている。バラエティー班は金がありますが、情報制作班は金がない、というのがテレビ業界の常識。つまり予算の少ない班のレベルに合わせて、制作費を新たに設定し、以前の出費を絞ることができるわけです」
スタッフが減り経費削減ができた。ゲスト出演者に対しても、出演料が引き下げられたという。
「文化人枠で出演する方々がいます。芸能リポーターと呼ばれる人はその枠なんです。以前のギャラは4万円だったのですが、新番組になって3万円に下げられたそうです。削れるところは全部削るというのが経費削減の鉄則ですが、それにしてもフジテレビが相当大変なのだなと思いましたね」(放送作家)
ハウリングを起こしながらも番組は船出した。
テレビ業界を救済する一手となるか
「二匹目のどじょうがあったても不思議じゃない」
前出・プロデューサーはそう指摘し、次のように続ける。
「来年3月に、朝の情報番組『とくダネ!』の司会者・小倉智昭が辞めると、一部で報道されました。代理店筋に確認すると、どうも規定路線のようです。現在、新たな司会者として石黒賢やお笑いコンビ『メイプル超合金』のカズレーザーの名前が取りざたされていますが、そうはならないようです。フジテレビが模索しているのは、『めざましテレビMORE』ですよ!」
月曜日から金曜日まで、毎朝5時25分から8時まで放送されている『めざましテレビ』。ほとんど局アナだけで占められている同番組の放送時間を延長し、『とくダネ!』を飲み込んでしまう吸収合併。まさに『バイキングMORE』方式が採用されるというのだ。
民放キー局はいま、コロナ禍のあおりを受け、あえいでいる。2020年4-6月期の決算でフジテレビは、純利益が9割減という大幅下落になった。
「テレビ局の広告収入は、これからもしばらく回復基調には戻らない。歴史的に見ても、テレビ局の経営がよくなくなると、生き延びるために製作費の削減に手を付けるものです。フジテレビの『バイキングMORE』方式が他局に波及しないことを祈るばかりですね」(前出・テレビ局プロデューサー)
とはいえ、フジテレビが打ち出した一手は、今のところ成功している。後々、この一手が波及し、テレビ業界を救済するシビアな一手だったと評価される時代が来るかもしれない。
〈取材・文/薮入うらら〉