真面目で誠実な人というイメージが定着した原田泰造は、俳優としてもそのイメージを担うようになっていく。今夏放送されていた「未満警察ミッドナイトランナー」(日本テレビ)でもまさに正義感が強くて熱い昭和の刑事を演じていた。すらっとした身体でスーツが似合うからか刑事役を演じることがよくある。
俳優としての出世作は2000年「編集王」(フジテレビ)。土田世紀の人気漫画のドラマ化で、原田は主人公である元ボクサーの熱血漫画編集者を熱演した。以後、俳優としての活動が増えていく。
コントをやる芸人は、シチュエーションの再現性や間のとり方などの能力が高く、それは演技に生かされるので、原田もその力をドラマや映画、演劇で存分に発揮していった。
俳優として全国区の認知度を得る登竜門・朝ドラにも出演。2013年「ごちそうさん」のヒロイン(杏)のお父さんで、洋食屋の料理人役を担当。洋食屋だから箸は使わせないという意地を見せるエピソードもあるなど頑固すぎるほど真面目な好人物をみごとに演じていた。同じく登竜門の大河ドラマにも出ている。
近作ではNHKで初主演した「全力失踪」(2017年)とその続編「大全力疾走」(2019年)でいい芝居をしていた。仕事がうまくいかず借金に首がまわらなくなったところ、7年行方不明でいられたら死亡とみなされることを知り、逃げ続けるという奇想天外な話。全力でするのは失踪だが、逃げるため疾走もしていて、カラダを張って演じていた。
カラダを張って演じることで説得力が増す
原田泰造のイメージ・誠実さがこれだけ長いこと崩れることがなく一貫していることは評価に値する。つねにカラダを張って演じることで説得力が増しているからであろう。
穏やかで真面目そうで、でもユーモアがあるという役柄は、主演でも助演でも魅力的に映る。その一方で悪役を演じることもあり、それはそれでハマっているのだが、やはり、原田泰造には実直というイメージが強い。
俳優は、あるとき当たり役を得たのち、たいていどこかでイメージチェンジをはかろうとすることがあるもの。それが原田の場合、元が俳優ではなく芸人であることが強みである。俳優はいろいろな役を演じられる変幻自在性が評価の対象になるものであるが、芸人の場合、同じネタを長く続けていくこと、あるいは芸人本人の人柄で勝負することも重要なのだ。