料理も絵も「子どもらを喜ばせようと」
石橋を叩いて渡る派からは、計画性がなさすぎだの人生設計が甘すぎるだの言われてしまうかもしれないし、もちろん、将来には備えておくほうがいいに越したことはない。
とはいえ、計画どおり、設計どおりにいかないのも人生なわけで。そのときになんとかしてしまえる人が、生命力が強いのは間違いない。
「いよいよ何もないときは、土手のクローバーを摘んでました。あれ、食えますよ。かき揚げにすると、実に色鮮やか。でもって、『どこかに幸運の四つ葉が混ざってるぞ』といえば、子どもたちがワッと喜ぶの」
クローバーが食べられることより、かき揚げにすると見栄えもよいことより、その状況下で楽しみや喜びを見つけだすことになんだかもう、圧倒された。
ちなみにダディ、番組内でもたびたび披露していたし、著書やブログの中にも掲載しているのでご存じの方も多いだろうが、イラストもうまい。自分たちをモグラ一家になぞらえていて、シンプルな線で表情も動作も豊か、躍動感もある。
「子どもらを喜ばせようと、描き始めたの。誕生日にはカードを作ってやったりね。あと、誕生日の子どもには、そいつ一人だけラーメン食べに連れて行ってやるんですよ。子どもらは一年に一度の楽しみだけど、俺はほぼ毎月食べに行ける、と」
料理もイラストも、あまりお金をかけず、というより、お金をかけられないから工夫していったことが特技、売り物として昇華されていったのだ。正しい節約家、真のやりくり上手といえよう。
──2006年にテレビ朝日系の番組として始まった、『痛快! ビッグダディ』は、かなりの人気番組だった。2013年まで続いた、長寿番組だ。
大家族を扱った番組はほかにもいくつかあったが、中でもダディのシリーズはその代名詞、代表作のように言われた。
毎回欠かさず見るほどのファンはさておき、まったく観たことがないという人までが存在やダディの名前は知っていたほどだ。
将棋界の林葉直子さん、プロレスラーのダンプ松本さんなど、そのジャンルに興味がない層にまで名前が知れ渡っていてこそ、本当に人気があった、といえる。ベストセラー本も、普段は読書の習慣がない層が買ってこそ生まれるのだから。
けれど考えてみれば、林葉さんやダンプさんは常人離れした才能や飛びぬけた実力で偉業を達成し、一時代を築きあげた、まぎれもない大スターだった。