さらに、猫と暮らすメリットはこれだけではありません。
猫はリラックスしているとき、喉をゴロゴロと鳴らす通称「ゴロゴロ音」を発することがあります。
ゴロゴロ音に含まれる微細な振動が、人の骨の骨密度を上げることがわかっています。
骨粗鬆症となり、骨密度が減少するリスクの高い人を対象に行った調査によると、振動を与えた群と与えなかった群の間に差があり、骨密度を測定すると、振動を与えた群で増加したことがわかりました。
つまり、ゴロゴロ音に含まれるような微細な振動が骨密度の増加に寄与したのです。
また、筑波大学の研究チームは、猫のゴロゴロ音とホワイトノイズ(換気扇の音やテレビの砂嵐音のような音)を人に聞かせたときの心拍解析を行いました。
まず、実験参加者の安静時の心拍数を測定し、これを基準値とします。
その後、ヘッドフォンから再生される数字を足していく計算課題によって、ストレスをかけます。その間、心拍数はずっと計測しておきます。
そのようなストレスのかかった参加者に対し、猫のゴロゴロ音を聞かせる群、ホワイトノイズを聞かせる群を作りました。
「ゴロゴロ音」はいいことずくめ!
最後にもう一度、音聴取後に心拍数を測定し、ストレス状態が緩和されたのかを分析しました。
その結果、音を聞いた後の心拍数は、ホワイトノイズ条件では基準値との差は見られませんでした。
それに対して、ゴロゴロ音条件では、心拍数が基準値と比較して減少していることがわかりました。
また、この減少には参加者が「猫が好きかどうか」は関係ありませんでした。
このように、ゴロゴロ音は骨に対するよい効果、リラックス効果がある可能性があり、人にとっていいことずくめの音になっています。
猫を飼育することで十分癒やされますが、さらにこんなに素晴らしいおまけがついてくるんですね。
高木 佐保(たかぎ さほ)ネコ心理学者、麻布大学特別研究員
1991年生。2013年同志社大学心理学部卒業。2018年京都大学大学院文学研究科行動文化学専攻心理学専修博士課程修了。博士(文学)。幼い頃から疑問を抱いていた「動物の心」を解明するため、ネコ研究の道へ。2020年現在、麻布大学で日本学術振興会特別研究員(SPD)を務める。ネコ研究集団「CAMP NYAN TOKYO」の一員としても活動中。「ヒトとネコが今よりもっと仲良くなれること」が研究の最終目標。著書に『知りたい! ネコごころ』(岩波書店)『猫がゴロゴロよろこぶCDブック』(サンマーク出版)がある。日本学術振興会特別研究員(SPD)。