コロナ対策を名目に5人以上の集会が禁止
山本さんによると、1か月ほど前に、サウナ、テーマパーク、カラオケルーム、プールなどが再開され、飲食店の営業時間が夜12時までに延長された。ただし、店舗をはじめ公共の場所ではマスク着用が義務づけられている。
「こうした情報を在香港日本国領事館がホームページに載せるのが遅く、いつも先に香港人の会社スタッフから教えてもらっているんですよ」
香港市内筌湾(せんわん)地区の52階建てマンションの50階に住む。窓から見えるベイサイドには、ジョギングする人が戻ってきているという。
路線バスを使って通勤。8時前に出勤し、21時ごろまで社内にいる。帰宅途中に自炊用の食材を買いに寄るスーパーも、運動不足解消のために日曜日に歩いている山も「混雑していますね」と。
「でも、コロナの恩恵を受けていることが1つだけあります」と苦笑する。
「観光業などの失業者が増えたため、現地スタッフを募集すると、日本でいうと東大にあたる香港大学の卒業生など優秀な人が応募してきて、採用できたことです」
山本さんは企業人という立ち位置からそう話した後、こうも言った。
「中国の中で唯一の“自由の砦”だったはずの香港から自由が奪われ、市民がデモで意見表明をしたくとも、新型コロナウイルス対策を名目に5人以上の集会が禁止されているほどなんです。日本の人も、もっと香港に関心を持ってほしいと思います」
取材・文/井上理津子(いのうえ・りつこ)
1955年、奈良県生まれ。タウン誌記者を経てフリーに。著書に『葬送の仕事師たち』(新潮社)、『親を送る』(集英社)、『いまどきの納骨堂 変わりゆくお墓と供養のカタチ』(小学館)、『さいごの色街 飛田』(新潮社)、『遊廓の産院から』(河出書房新社)、『大阪 下町酒場列伝』(筑摩書房)、『すごい古書店 変な図書館』(祥伝社)、『夢の猫本屋ができるまで』(ホーム社)などがある。