『82年生まれ、キム・ジヨン』(C)2020LOTTEENTERTAINMENTAllRightsReserved.
『82年生まれ、キム・ジヨン』(C)2020LOTTEENTERTAINMENTAllRightsReserved.
【写真】キム・ジヨン、義母からプレゼントされた花柄エプロンに気が重い……

 優しそうに見える夫の何気ないひと言もジヨンを追い詰めていく。夫の無理解を痛感するのはジヨンだけではない。

「夫は優しい人です。周囲からもそう見えます。でも育児を手伝ってやっているという感覚。日曜日に遊びに行くことを家族サービスと呼ぶことも腹立たしい。サービスってなんですか? 子どもがやっと4歳になって私が初めて友達との飲み会に行ったとき、子どもが泣くからと車で子どもを連れて居酒屋まで迎えに来た恨みは今も忘れません。
 
 産後育児に追われそんな気になれないときに性行為を迫ってきたことも許していない。私の身体をなんだと思っているのか。だけど、それも妻のすべきサービスだと思っているらしく本当に許せない」(千葉県・愛さん・34)

1人目を出産してすぐ、まだ生理が戻っていないのに夫に《この子に兄弟がいないとかわいそうだろ》と年子での出産を提案されたときは殺意がわきました」(東京都・沙奈さん・40)
 
 キム・ジヨンというヒロインの名前は、韓国で最も一般的な名字のひとつ「キム」と、1982年に生まれた女の子の名前として最も多い「ジヨン」を組み合わせたもの。ごく平凡な、他者から見ると、どちらかというと恵まれている部類に入る女性の少女時代から30代前半までのありふれた人生を通じて社会の根深い性差別を突きつけた同作。

 日本でも大反響を巻き起こしているこの作品が、それが韓国特有の問題ではないということを教えてくれた。
 
 原作者のチョ・ナムジュは読者にこう語りかけている。

「最大公約数的名前をタイトルにしたのは、そこに誰の名前を入れても当てはまる物語であり、あなた自身の物語である」

『82年生まれ、キム・ジヨン』
キム・ドヨン監督/出演:チョン・ユミ、コン・ユほか
10月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:クロックワークス


【あらすじ】主人公のキム・ジヨンは33歳の主婦。3歳年上の夫と1歳になる娘とソウル近郊で暮らしている。1982年生まれの韓国の女性で最も多い名前はジヨンとされ、主人公もどこにでもいそうな女性だ。ジヨンは誕生から学生時代、就職、結婚、出産に至るまでさまざまな女性差別に苦しみながら必死に生きてきた。しかし、ある日、通りすがりの男性から侮辱されたことで精神に異変をきたし、精神科病院に通い始める。物語は彼女が病院で話した半生を聞き取って記したカルテという形式で進んでいく──。