小泉今日子のイメチェンに貢献
続いて、小泉今日子は'83年5月、シングル5作目にて筒美作品『まっ赤な女の子』(作詞:康珍化、編曲:佐久間正英)を発表した。その前々作『ひとり街角』と前作『春風の誘惑』では、内向的な女の子が主人公のシングルを歌っていて、そこそこヒットはしたものの、やや横ばい気味に。本人も『ひとり街角』について「なんでブローチを落としたくらいでこんなに焦っているのか、よくわからないまま歌っていた」と発言するほど、素の自分とのギャップを感じていたようだ。
そこへ『まっ赤な女の子』でタイトルどおり、まっ赤な太陽のもと、まっ赤に日焼けしたまっ赤なビキニの開放的な女性を元気に歌うことで、大きくイメージチェンジ。また、前作を歌っているころから、所属事務所の社長がその短さに驚愕してソファーに倒れこんでしまうほどのショートヘアにしたことも功を奏して、同性からの支持を一気に増やした。小泉のブレイク以降、“スポーツ系女子”のショートカットは「仕方なく」ではなく、「カッコ可愛いから」という選択肢となった。
また、この歌の歌詞にある《♪濡れたTシャツドッキリ~》の「キリ」部分に現れるしゃくりがトリッキーに聞こえるのも、小泉×筒美作品の特長だろう。例えば、太田裕美の大ヒット曲『木綿のハンカチーフ』の《♪恋人よ僕は旅立つ~》の「つ~」で、地声から裏声にキレイに変わるのが彼女の持ち味となっているように、それぞれの歌い手の魅力を最大限に引き出せるのも、“筒美京平マジック”と言えるだろう。
小泉が歌った筒美作品でTOP10入りしたのは合計8作。その中には、彼女の代表曲でもある'85年のド派手な『なんてったってアイドル』もあるが、'86年のしっとり系バラード『夜明けのMEW』(作詞:秋元康、作曲:武部聡志)も、'86年度の年間有線ランキングで20位と、彼女屈指の有線ヒットとなっている。(『なんてたって~』は有線45位)あまり歌唱力で語られないキョンキョンだが、筒美作品を歌った3~4年で、表現力がぐんと伸びた結果とも言えそうだ。