〈マイナスになる財産〉
最悪、夫の借金も相続することに
財産をリストアップする際、借金などのマイナスの財産についても明らかにしておく必要がある。というのも、相続の際、遺族はそれらも引き継ぐことになるからだ。
「隠しておきたいでしょうが、家族には知らせておきましょう。額によっては相続放棄するなどの対策がとれます。額が大きいであろう住宅ローンについては、団体信用生命保険などに加入していれば、加入者の死亡時に残りはチャラになるので安心を」(福田さん)
借金ではないが、月々の支払いも書き出しておくと後々の手続きがスムーズになる。
「水道光熱費、通信料などの支払い、または引き落としなどですね」(福田さん)
特にしっかり確認してほしい、と福田さんが警告するのが連帯保証人について。
「お店を頑張っている友人を応援したい、などと善意でハンコを押し、家族の知らないうちに連帯保証人になっていたケースもあります。現在は借金という形では見えていなくても、その友人が事業に失敗したら、その借金の返済義務が連帯保証人にかぶさってきます。連帯保証人が死亡していれば法定相続人にかぶさってくることに……」
対策としては、相続放棄をするといった方法などがあるが、こちらも事前に弁護士や税理士への相談を!
「夫にマイナスの財産があり妻子が相続放棄した場合、夫の両親、兄弟姉妹、甥姪の順にそれを支払う義務が引き継がれます。相続放棄するよう前もって親族へも知らせておきましょう」(福田さん)
普段、夫側の親族と、例え交流や面識がなくても相続においては関わりがでてくる。
「相続に関する知識を持つと同時に、日ごろから夫としっかり“これまで”“これから”について語り合い、親族ともコミュニケーションをとっておくことがいちばん大切です。面倒だと思っても、これが最大のトラブル防止法になりますよ」(武藤さん)
【マイナス財産の例】
◎借入金……借金の存在を知らないまま相続手続きを終了し、後から遺族が返済を迫られることが。その場合は要返済となることが多い。
対策:金融機関や友人・知人からの借金は本人が生きているうちに早めに返済しておく。残りそうな場合は借入先や金額を伝えておく。
◎ローン……団体信用生命保険に加入していない住宅ローンや車のローンの返済義務も、相続人に受け継がれることになる。
対策:借入先や借入内容をリストアップし、なるべく早く本人が返済。住宅ローンは団信に加入しているか確認しておく。
◎実家の土地……空き家になった親の実家をボロボロのまま放置し、「特定空き家」に指定されると、固定資産税の軽減がなくなり、「負動産」状態に。
対策:もう住む予定がない住宅や土地は売却する。更地にすると固定資産税などが高くつくので、家付きのまま売るほうがよい。
◎連帯保証人の返済義務……金融機関の借り入れや不動産賃貸契約の連帯保証人になっていた場合、相続手続き後に返済義務が引き継がれることが。
対策:新たな保証人や担保を見つけない限り連帯保証の解除は困難。生前贈与や保険の利用で財産を移動したうえで、相続放棄を検討。
◎銀行の自動引き落とし……動画視聴サービスなど定額サービスは、クレカが凍結され自動的に失効するものもあるが、会社によっては相続人に請求されることも。
対策:毎月、何のサービスの料金をどこから引き落としているのかリスト化。必要に応じてログインIDやパスワードも伝えておく。