感染者数が増え続けると重症者数も一気に増加
まず、目の前に迫るのは医療崩壊だ。
春先は新型コロナウイルスの対応に医療機関も手探りの状態だった。増える感染者に病床が足りず、受け入れ先の確保が問題になっていた。
今は当時の経験やデータをもとにして対策を強化。受け入れ先の病床を増やしているが……。
「日本では欧米のようなロックダウンや外出規制をしていないので、この先も感染者や重症者が増え続ける可能性はあります」
前出の田中医師はそう見通し、注意を呼びかける。
「今の状況を考えると、これから1か月ほど後に医療の状態が切迫することが懸念されます。第1・2波の傾向や病気の特性から見て、感染者数がこのまま増え続けていくと、重症者数が一気に増加するときがくる」(田中医師)
重症者が増えて病床が足りなくなれば、患者の受け入れ率が一気に下がる。感染者が入院しようとしても受け入れ先がなく、たらい回しにされる可能性は高くなる。
高齢者の感染拡大で介護崩壊も
医療崩壊が長引けば、重症化した高齢者の治療が後回しになるおそれもあるという。
「ただ、日本はそんな割り切ったことはできないでしょう。患者の年齢によって治療の線引きをすることはありません」(前出・植田さん)
しかし、海外を見ると実際、スウェーデンでは、中高年や若年層を助けるため、70歳以上の重症者の治療は控える方針をとった。
危機的な状況下では、日本でもこうした判断がとられる事態にもなりかねない。
さらに高齢者の感染拡大が介護崩壊を引き起こす。
前出の植田さんによると、
「高齢者の感染を防ぐため“デイサービスに行けない”“福祉サービスを受けられない”などが起きることも考えられます」
在宅で介護しようにも、濃厚接触を懸念して介護ヘルパーが来る頻度が減ることもありうる。そうなれば家族の負担が増え、共倒れになる危険性がある。
「高齢者は特に感染に気をつけなければなりません。不要な外出を極力控え、お子さんやお孫さん、若い人と接触をしないなど、介護崩壊を招かないためにも自衛は大切です」(前出・同)
接触を減らすためには自宅でネット環境を整えること。ネットを苦手とする人もいるかもしれないが離れて暮らす子や孫とはリモートでやりとりしてみよう。買い物も宅配やネットスーパーを利用するなど対策をとりたい。