証拠多数残るも動機不明
発生当時、現場からは犯人の指紋や血痕のほか、犯人が脱ぎ捨てたトレーナー、靴、帽子などの衣類一式、犯行に使われた柳刃包丁など多くの遺留品が見つかった。
犯人はA型で身長170センチ前後の比較的若い男とみられている。DNA型鑑定の結果、父系が東アジア系民族、母系が欧州系(地中海)民族であることがわかっており、警視庁は、「アジア系含む日本国外の人」および「ハーフの日本人」の可能性も視野に捜査を進めている。
犯行後、犯人はそのまま長時間現場に居続け、冷凍庫に入っていたカップのアイスクリームを素手で絞り出して食べたり、みきおさんのパソコンでインターネット検索をするなど、その異様な行動に注目が集まった。それだけ証拠が残っていながら、犯人の侵入経路はわかっておらず、事件は迷宮入りした。
当時、捜査を指揮していた警視庁元幹部は語る。
「普通の犯人ならば、現場に長時間居座るなんて考えられない。目的を達していないことの表れだ。そこには犯人しか知りえない動機があるのだが、それが解明されていないから、捜査に混乱が生じるのです」
現場となった一軒家は現在、公園の側にぽつんと立っており、ひび割れなどの経年劣化がみられる。周囲にはフェンスが張り巡らされ、近くにある電話ボックス大の詰め所は昨年2月、捜査本部が置かれた警視庁成城署の署員が引きあげたため、中には誰もいない。公園でスケボーなどを楽しむ若者たちの声がこだまする中、その一角だけは、薄気味悪いほどひっそりしていた。
息子をすべり台で遊ばせていた会社員の男性(40)は、こう素直な気持ちを語った。
「あの家が事件現場だというのは知っていますが、公園に通ううち、その感覚は薄れていきました。取り壊すか否かの問題がありましたね。証拠はもう出てこないだろうから、何のために残しているのかという疑問はあります」
現場の一軒家は昨年1月に取り壊される方向だったが、事件の風化を恐れた遺族の意向で、延期された。