放置はキケン! 口 の衰えサインを見逃さない
オーラルフレイルの代表的な4つの症状の原因と対策を徹底解説。心当たりには、すぐケアをしましょう。
【1】むせる →食事のときは“深呼吸の姿勢”を意識!
ゴクンと飲み込むことを“嚥下(えんげ)”というが、汁物を飲んだときにむせるのは、この嚥下機能の低下の表れ。主な原因は筋力の低下だ。食べ物や飲み物は、口→のど→食道と3つの部屋を通っていく際に、のど仏や喉頭蓋(こうとうがい)などのドアをあけて流れていく。しかし50代を過ぎると、筋力低下からドアの開け閉めがしにくい状態に。
「前かがみな姿勢で食事をすると、むせがち。深呼吸するときのように、胸をしっかり開けることで、通り道をまっすぐに保てます」
また、舌の力が弱った場合も嚥下機能は低下する。
「何かを飲み込むとき、舌が上あごに押しつけられることでのど仏が上がり、食道の入り口を広げ、食べ物を通過させます。舌の力が弱いと、のど仏が上がりきらず、食道への入り口も開かないままです。『舌の体操』(記事の後半で紹介)で筋力キープに努めましょう」
【2】かたいものが食べにくい →献立に噛みごたえのある食材を追加!
たくあんなどが食べにくくなるのは、入れ歯や歯の欠損、あごの筋力低下などが原因で、食事の内容には注意が必要だ。
「噛む力が弱まると、野菜、海藻、魚介、肉などを避け、パンや麺、菓子類を多くとりがち。栄養状態は悪化し、噛む力はますます低下していきます。毎日の食事は何よりの咀嚼(そしゃく)トレーニング。一品でも歯ごたえのある食材を取り入れて」
噛むことで、唾液の分泌を促し、胃腸への負担も軽減できる。
「口のまわりの筋肉も鍛えられるので表情も豊かになります」
【3】口臭が気になる →歯磨きケアと舌の体操が有効!
口臭の原因は、歯石や歯垢(しこう)、舌苔(ぜったい)などの汚れや自浄作用のある唾液量の減少などだが、
「口腔内の汚れ、嚥下機能の低下、免疫力の低下などの要因が重なると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります」
口の中が不衛生だと、肺炎の原因となる細菌が多く増殖して症状の悪化につながる。
「基本は1日3回のブラッシングで口の中を清潔にすること。歯間ブラシを使ったり、入れ歯の手入れも丁寧に。舌は、動かさないと汚れが付着しやすいので、『パタカラ体操』(記事の後半で紹介)などで意識的に動かしましょう」
【4】口が乾く →唾液腺を刺激し分泌量をアップ!
年齢とともに唾液の量と質が変わってくるのが、口が乾く原因。若いときの唾液はサラサラとしているが、年齢を重ねると粘り気のある唾液が多くなる。加えて唾液の分泌量も減ってくるので、口の中がネバつき乾きを感じやすくなるのだ。
そのまま乾燥が進むと、舌や唇・頬の動きが悪くなり、嚥下や会話がしにくくなる。すると味覚も鈍くなり、食べる楽しみも低下してしまう。
「食事の前に唾液腺のマッサージ(下記参照)をすると、口の中がうるおうので、食事がしやすくなります。市販の口腔保湿剤を使うのもおすすめです。口の乾きや不快感が軽減しますよ」
【唾液腺マッサージ】
●舌下腺マッサージ
親指を立てて、あごの下から舌の部分をやさしく押す。強く押しすぎないように注意。7~10回繰り返す。
●顎下腺マッサージ
両手で握りこぶしを作り、左右のあごの下にはめ込むように当てる。首のほうから手前に向かってこぶしを動かす。10回以上繰り返す。
●耳下腺マッサージ
左右の耳の下より少し前の位置に人さし指、中指、薬指の3本を当て、そこを中心にゆっくり円を描くように指をやさしく回す。2分以内に10回以上繰り返す。