あまり注目されていないポイントだが、漫画原作のドラマ化がヒットする1つの要因は、結果的に「原作者と脚本家がアイデアを出し合う形になる」こと。
例えば1月の続編スペシャルが好評だった『逃げるは恥だが役に立つ』は、4年前の連続ドラマの後のストーリーを原作に基づいて描いたが、主人公夫婦に子供が生まれたのが2020年で、コロナ禍の中、夫婦が会えない状態で子育てするという展開はドラマオリジナル。
その展開があったからこそ現在にフィットしたものになった。原作者が漫画連載の時点で編集者と共に練り上げた物語を、ドラマ化の際、脚本家とプロデューサーがさらにアップデートする。その2段階の作業が、オンエアされるドラマの質を高めるのだ。
「漫画原作ドラマ」の意外なメリット
世界でのコンテンツ販売が好調なアメリカのドラマは、複数の脚本家がチームで取り組み、例えば現在、テレビ朝日系で日本版が放送されている『24-TWENTY FOUR-』はアメリカでは1話に4人が動員されている。
日本ではいまだに1人の脚本家が初回から最終話までを書く“作家枠”になっていることが多く、視点が1つしかないために偏った設定になったり、現実的に見ておかしい点に気づかなかったりすることが多い。
そんな単焦点の弊害を多焦点にできるのが、原作ものの利点ではないだろうか。同じく放送中の『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系)では、主人公の脚本家(生田斗真)が急に連ドラの執筆を頼まれ、プロデューサーから「明日までにストーリー案を考えてきて」などと無茶振りをされている。
このスケジュール感覚はいくらなんでも大げさだとしても、企画よりキャスティングが先行し、制作準備時間が短く、脚本家の層も薄いという日本のドラマ制作の問題点は描かれており、そういった弊害を補うために漫画原作ドラマが多く作られてきたとも言える。
『オー!マイ・ボス!』では第3話以降、奈未がファッションに目覚め、ストーリーにも深みが出ていくとは思うが、現在のところ、作品の評価はレビューサイトでも高くない。
コミック原作の『私の家政夫ナギサさん』までは一定の高評価がつき、各ドラマ賞なども受賞していたのだが、オリジナルに踏み切った火曜ドラマがこれまでの作品に匹敵するドラマを作り出せるのかに、今後も注目したい。
小田 慶子(けいこ おだ)ライター テレビ誌編集者を経てフリーライターとなる。日本のドラマ、映画に精通しており、雑誌やWebなどで幅広く活躍中。