若者に“にくまれないコツ”は?

〜さんまに徹子、梅沢富美男、若者に転がされることにあり?〜

 とはいえ、老害に陥りやすいのはやはり高齢世代だ。にもかかわらず、お笑い界では大ベテランがそれほど老害扱いされずに第一線で活躍しているケースが目立つ。タモリなどはその代表だろう。

 ビートたけしや明石家さんまも、比較的そういう扱いをされずにすんでいる。さんまは今年の正月、コロナ禍の影響で海外に渡航できず、30年ぶりの生番組をやった。1月2日放送の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)だ。

 この決定が11月放送の同番組で発表された際、妻子持ちの中堅芸人・陣内智則は、

「カメラさんもスタッフさんも家族があるの! 僕はもう“2日は休ましてもらう”って言いました」

 と、クレーム。しかし、さんまは「先輩命令や」と返して、笑いを誘った。大物芸人たちは仕事柄、老害を笑いでごまかすこともうまいのだ。

 そう、実は老害で嫌われないコツも「笑い」だったりする。デヴィ夫人は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で出川哲朗と一緒に身体を張ることにより、黒柳徹子は『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で芸人たちに無茶ぶりをすることにより、どちらも面白がられている。黒柳の「あなた面白いんでしょ。ここでやってみてくださる」に困惑する芸人の姿を楽しみにしている人は少なくないはずだ。

 逆に「ケンカ」になったりすると、つらい。上沼恵美子はとろサーモンの久保田かずのぶにSNSで暴言を吐かれたあたりから、若手とうまくやれないイメージができあがってしまった。本人も気にしているようで、

「私、後輩にバカにされるようにできてんのかなぁ」

 と、ラジオで愚痴ったこともある。

 しかし、そこはむしろ、あえてバカにされたほうがいいのかも、というのが最近の梅沢富美男だ。けっこう老害っぽいイメージがあるわりに、テレビなどでの需要は減らない。ソフトバンクのCMでは、芦田愛菜扮する店員にカンタンに転がされる役で登場。バラエティーでも、藤田ニコルのような若手タレントにデレデレと鼻の下を伸ばしている。そんなゆるいオヤジっぷりが、かえってにくめない感じにつながっているのだろう。

 実際、若者と絡むのは有効だ。瀬戸内寂聴なども66歳下の女性秘書と一緒の暮らしぶりを見せることで、話のわかるイメージがつけ足された。また、宗教家でもある彼女と似たケースが、スピリチュアル系の美輪明宏。悪く言うと祟られそう、というのも変だが、老害扱いするのをためらわせるオーラがあるのだ。

 それにしても今回、取り上げた人たちはなんだかんだいって元気だ。もしかしたら老害とは、元気の証なのかもしれない。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。