女4人集まれば、3人に症状がある尿漏れ

 日本排尿機能学会の調査によると、尿漏れ経験がある女性は40代以上で3人に1人、60代以上で4人に3人だという。60代が集まれば、ほとんどが尿漏れ経験者!

「尿トラブルは誰にでも起こりうる老化現象のひとつです」というのは武田淳也先生。膀胱(ぼうこう)や脳神経などの病気が潜在的に関わっている場合もあるが、ほとんどは骨盤底筋の衰えが原因。加齢に加え、更年期以降は女性ホルモン・エストロゲンが減少することで筋肉を維持する働きが弱まってしまう。加えて運動不足や肥満、便秘なども要因に。

「また経膣分娩をした人は、骨盤底筋などにダメージを受けていることが多く、なんらかの尿漏れリスクを持つ人は29%もいるというデータもあります」(武田先生、以下同)。

 尿をためるときは平滑筋がゆるんで膀胱が膨らみ、尿道括約筋がキュッとしまって尿道が開かないように調整している。骨盤底筋は膀胱や尿道、膣などの臓器を支えつつ、尿道括約筋とともに尿道を開閉し、排尿をコントロールしている。

「骨盤底筋が衰えると臓器が下がって尿道括約筋の力も弱まります。そのため、ちょっとした刺激で漏れてしまうのです」

 一般的な女性の尿失禁には、大きく2つのタイプがある。くしゃみや笑うなど、腹圧がかかったときに無意識に尿が漏れるのを“腹圧性失禁”といい、産後女性や40代以降に多い。もうひとつは“切迫性尿失禁”。急に激しい尿意が起こり、トイレに間に合わずに漏れてしまうタイプで、高齢者に多い。

 こちらは膀胱が勝手に収縮する“過活動膀胱”も原因となる。この2つを併発している“混合性尿失禁”というタイプも。

骨盤底筋を効果的に鍛える!

「健康で快適な日々をキープするためにも尿トラブルは放置せず、早めのケアが肝心」

 深刻な病気が隠れている場合もあるので、まずは医師に相談し、正確な診断を受けるのがベスト。そのうえで実践したいのが、骨盤底筋を鍛える運動。

「一般的な骨盤底筋体操は、膣や肛門をキュッとしめるというものですが、深部筋なためうまくできない人も多い。そこで、おすすめしているのが“ピフィラティス”というトレーニング(※次ページ参照)」

 腰や脚を上下に弾ませるリズミカルな動きが特徴で、骨盤底筋を意識できなくても、効果的にトレーニングができる。

「ピフィラティスなら、通常時に比べて最大で18~40倍の負荷を骨盤底筋にかけることが可能。便漏れ対策としても有効です」

 加えて、利尿作用と膀胱を刺激する作用があるカフェイン飲料を避ける、過活動膀胱を起こしやすい香辛料や柑橘類を避けるなどの生活習慣の注意も必要だ。

生理用ナプキンの代用はNG!

 尿漏れには、パンティーライナー、尿漏れパッド、紙パンツと、どれを選んだらよいか迷うところ。選び方のコツを花王サニタリー事業部・白神尚人さんに伺った。

「尿の量が少ない場合は、尿漏れ対応のパンティーライナーやパッドがいいでしょう」

 吸水量も微量から数百ccまであるので自分に合ったものをチョイスしやすく、汚れたらすぐに交換できるのも便利。

「ただし吸水できる面積が小さいので、運動する場合などは横漏れの心配が。その際は、使いきり吸水パンツがおすすめです」

 パンツとパッドが一体になっているので、ヨレとズレが回避できる。そして注意したいのが生理用ナプキンでの代用。

「おりもの用のパンティーライナーもそうですが、尿を吸収するために作られていないので、吸収した尿がしみ出しやすい。肌へのダメージもあるので避けたほうがいいです」