「夜の世界の“色恋事情”」
作中では中田喜子演じるホステスのエリー(源氏名)が若い時分、結婚詐欺師と恋に落ちたエピソードがある。
夜の世界に色恋はつきもの。“恋多き女”も少なくない。
「趣味は結婚、特技は離婚!」
そう豪語するのは、茨城県水戸市でスナックを営む北宮亜希子さん(54・仮名)。これまで計3人の男性と結婚し、離婚。今は店を切り盛りしながら、独身生活を謳歌している。
「気づいたら、うちの店のホステスは、み〜んな離婚歴のある女性ばかり。なかには『バツ9』のホステスまでいるんだから! もはや、バツイチなんて無傷よね」
おおらかな笑みを浮かべる亜希子ママの店には、女性客も多く、婚活相談から夫とのセックスレスまで、赤裸々な恋愛話が繰り広げられている。
「特に『長年付き合っている彼女との結婚に踏み込めない』なんていう若い男性は説教よ。その場で彼女を呼び出せと言ったこともあるわ(笑)。私だって“結婚したい”と言われたら、もう1回ぐらいしても悪くないもの。いくつになっても、恋をして幸せになりたいという気持ちは変わらないわ(笑)」
失恋しても笑って迎え入れてくれる人たちがいる──。
それも熟女バーの魅力だ。
「若いころは、『とにかくお客さんの指名が欲しい』ってギラギラしてました。でも四十路に差しかかったころから、そういうのもしんどくなっちゃって……。お店にも次々と若い子が入ってくるし、お払い箱になった私を受け入れてくれたのが、このお店なの」
東京都町田市にあるバーで働く高梨京子さん(47・仮名)は、しんみりとした口調で語る。ママは65歳で、ホステスも40代や50代。ドラマを地で行く高齢バーである。
「今は“この場所”自体をなにより大事にしているの」
そう語る京子さんには、今も忘れられない出来事がある。昨年のとある冬の夜だ。
「この日は月末の金曜日で、狭い店内はすし詰め状態。常連さんや一見さんも和気あいあいと飲んで盛り上がっていたんです。その中の1人の60代の男性が『俺は元警察官だったんだぞ!』と急に怒鳴り始めてね」
それまで和やかだった店の空気は、硬直。すぐさま京子さんをはじめホステス4人が泥酔した男性を取り囲んだ。
「みんなで“お客様、もしそういう言葉遣いをするのなら、別の店でお楽しみくださいね”と言って、“いっせーのせ”でイスごと持ち上げて店外に追い出したの。すごい力持ちでしょ、私たち(笑)」
見事なチームワークで迷惑客を撃退した京子さんたち。当時の心持ちをこう振り返る。
「たとえお客さんでもほかの常連さんに嫌な思いをさせたくない。なにより自分たちの『居場所』を荒らされたくない、そんな一心だったわね」
京子さんにとって、お店は職場以上の居場所なのだ。そして作中の熟女ホステスたち同様にママを慕っている。