好きなことをやると自己肯定感につながる
「出口が見えない現状は、専門医やカウンセラーも初めての経験です。どうなるのか誰にも予測がつかない、わからない。そういった中にあって、唯一わかるのは“自分のこと”ですよね。過去を振り返ると後悔が、未来を考えると不安が押し寄せる──、ネガティブなことを考えてしまいがちですから、『いま自分は何をしたら楽しいか?』を第一に考えてみてください」(石原さん)
くしくも、コロナは人に会えない、外に出られない状況を作り出したことで、本当に自分が必要としている人間関係の整理の機会になったともいわれている。ひとりで行動する“おひとり様”は珍しいことではなくなり、ひとりに対するイメージはマイナスからプラスなものへと変化しつつある。
山下さんは、「過去の成功体験を思い出すこと。どうすれば自分がいちばん楽だったかを自覚することがポイント」と授ける。
「自分はしているのに、あいつはしていない。自分はまともで、あいつはだらしない。隣の芝生を見るような考え方は、精神的によくありません。比較するのではなく、自分が好きなこと、楽しいことをやればいい。誰かと比べて自信を持つことが大切なのではなく、楽しいことをやることが、対コロナうつの護身術です」(山下さん)
新しく楽しいことを無理に見つける必要もなし。どんなに小さなことでも自分が楽しいと思えることは、自己肯定につながっていく。気がついたときには、きっとコロナも収束しているはず──。
【まとめ】親との付き合い方「こうしてみては?」
●精神科医・山下さんのアドバイス!
・無駄こそコミュニケーションのカギ
・「なんで〇〇しないの?」は劣等感を与えるだけ
・親に役割を与えてあげる
●心理カウンセラー・石原さんのアドバイス!
・家族間でも個人の意思を認め合う気持ちを持つように
・コロナは自分の自立や自分の人生そのものを考える機会
・過去や未来ではなく、いまと向き合う
●老年内科医・岡本さんのアドバイス!
・親の行動量や積極性にアンテナを張る
・正しい情報を増やしていく
・家族を守るために、わかりやすい数字、ひとくくりの文言を疑うこと
(取材・文/我妻アヅ子)
山下悠毅 ◎やました・ゆうき 精神科医。ライフサポートクリニック院長。専門は依存症全般、パーソナリティー障害。「薬だけに頼らない医療」をモットーに、保険診療での集団カウンセリングを日々、開催している。著書に『いい子をやめれば幸せになれる』(弘文堂)など。