人気を集めた要因は何か。前任校である離島の中学で教わった女性はこう話す。
「物知りで、中学生相手でもバカにせず真剣に向き合ってくれたんです。学者のような雰囲気があり、話は常に論理的で、違うものは“違う”とはっきり言う。ひと言でいっちゃうと“変わり者”なんですが、何を考えているかわからないような不思議な魅力に好意を持つ女子生徒もいました」
サイエンティストらしい話しぶりはいまも記憶に残っているという。
《僕は、人間が進化していくとこうなるんじゃないかと予測しているよ。文明が進んで身体を使わなくなるため痩せ細り、考える機会が増えて頭は発達して大きくなる。見るものも多くなるから目も大きくなる。すると、みんなが目にしたことのある宇宙人のイラストに近づいていくよね》
生徒の好奇心をくすぐるのがうまかった。
離島の中学では男子バスケットボール部の顧問だった。立て続けに運動部を指導しているが、スポーツマンタイプではないらしい。イケメンとも言いがたい。ただ、独特の存在感とやさしい語り口は女子生徒に受け、バレンタインデーには義理チョコが集まっていたという。
「当時からお腹が少し出ていたけれども、私も“好きな先生”でした。いつの日か、船山先生が島に来てくれて一緒にお酒を飲めると思っていました。大人としてまた会いたかったです」
と卒業生の女性は残念がる。
容疑者宅の庭先には、離島のシンボルを模した石細工があった。忘れがたき思い出なのだろう。道を踏みはずしそうになったとき、これまで指導してきた大勢の教え子の顔は思い浮かばなかったのか──。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する