「私がすべて悪かった」

 この関係者は、最近の容疑者の異変に気がついていたという。

「今までは、父親に怒られると、素直に“はい! はい!”と姿勢を正していたけど、近ごろは反抗ぎみだった。ストレスがたまっていたのか、顔色もよくなかった」

 奈那子ちゃんの不幸な生い立ちを悲観していたのでは、と別の関係者。

「実は奈那子ちゃんの障害は先天的なものではなく、食中毒が原因という噂があってね。4歳になる直前に、店の残りものを家族で食べたら、あたって、高熱を出した……という話で。

 奈那子ちゃんは、その前にも、家の風呂場で溺れたり、地域でお伊勢さん詣でをしたときに迷子になったりしたことがあった。

 たった10年しかない人生なのに最後までかわいそうな子やった。湖の水はどんなに冷たかったやろうし、怖かったやろうなぁ」

 障害のある娘を育てる苦労のうえに、父親の態度にいたたまれなくなった容疑者の心情は推して知るべしーー。

 その父親(奈那子ちゃんの祖父)に話を聞くことができた。

「孫の奈那子が死んでしまったのも、息子が逮捕されてしまったのも、私がすべて悪かった……。反省というか、後悔しています……。奈那子を道連れにして、無理心中するところまで、あいつを追い込んでしまったとは、まったくわからなかった……。

 確かに仕事も忙しかったやろうし、家に戻っても休まることがなかったんやろうな。そこまで思いつかなかった私が、悪かったんです」

店先に貼られていた臨時休業のお知らせ
店先に貼られていた臨時休業のお知らせ
【写真】近所の人たちは「信じられない」徳谷和彦容疑者

 そう涙ぐむ父親は、短髪に白髪が目立ち、マスクに前掛け、白いゴム長靴姿。事件でしばらく休んでいた店を、再開しようと準備をしていたときだった。

 奈那子ちゃんの生い立ちについては、

「奈那子が食中毒で障害者になったのは違う。誰がそんなこと言うとるんですか? ある日、突然、高熱を出して急いで病院に連れて行ったら、難病やったんです」

 その後遺症で障害に……と再び涙を見せた。祖父がいくら悔やんでも孫が帰ってくることはなく、息子もすぐに戻ってくることはないかもしれない。

《勝手ながらしばらくお休みさせていただきます》

 という店先の貼り紙が取れるのはいつになるのかーー。