「どこでメモをつけられたのか…」
被害者の苦悩
前出の三浦容疑者のような『メモ男』に苦しめられているケースはほかにもある。
東京都の島田綾子さん(30代・仮名)が、そのときの経験を明かしてくれた。
「帰宅してカバンをふと見ると、セロハンテープで何か紙がつけられていることに気づきました。なんだろうと思って確認すると、そこには名前や連絡先、そして“地下鉄でお見かけして気になったので、よかったらメールください”というメッセージでした……(写真参照)」
その文言にゾッとした島田さん。さらに恐怖を感じたのは、そのメモがいつ貼りつけられたのかがわからないことだった。
「相手は私の顔を知っている。でも、私はその人の顔を知らない。どこかで見張られているのではないかと考えたら、本当に怖いし、気持ちが悪かった……」
以降、その男からメモがつけられることはなかった。だが、島田さんは“あのときの気持ち悪さが記憶から消えることはない”と話す。
『メモ男』による事件がどれくらい起きているのか──。記者が調べてみると、匿名のお悩み掲示板には同様のケースで嫌な思いをした女性からの投稿が数多く寄せられていた。
罪を認めない限り、
繰り返すストーカー行為
第三者がカバンにメモを入れたり、貼りつけたりする行為は犯罪に当たるのだろうか。
刑事事件に詳しい『末原刑事法律事務所』の末原浩人弁護士に聞いた。
「残念ながら、今回のような内容のメモを1度カバンに入れたり、貼りつけたりしただけでは、その人物を直ちに処罰することは難しいと思います」
冒頭の三浦容疑者のケースは、同じ女性に対してカバンの中に3回メモを入れたり、防犯カメラにもつきまとい行為をしている様子がうつっていたりした。それらの行為が決め手となって逮捕に結びついた。
「女性に気づかれずにメモを入れるためには、後ろをうろうろしたりして、しばらく隙をうかがう必要があります。その行動自体はストーカー規制法上のつきまといに該当すると思います」(前出・末原弁護士、以下同)
しかし、同じ女性に対してつきまといを複数回繰り返さないと、ストーカー行為とは認定されない。
「警察はまず、口頭注意や書面による警告を行います。警告を受けたことで、つきまといなどを止める人も少なくありません」