地震の受け止め方に“ズレ”を感じる
地震とともにAさんが心配するのは、やはり原発事故だ。
10年前、福島第一原発から放出された大量の放射性物質は、風に乗って内陸部へ流れ、福島市内にも降りそそいだ。もともと神経系の病気があるAさんは体調悪化に悩み、一緒に住む息子は鼻血を出したり、帯状疱疹(たいじょうほうしん)に苦しんだりした。
当時さらにAさんを苦しめたのが、周囲の受け止め方とのギャップだった。政府や福島県は「ただちに健康への影響はない」と言い続けた。息子が通う小学校もすぐに再開した。しかし実際問題として、自分や息子の体調は確実に悪化した。自分の心配が世の中にまともに受け止められていないという「ズレ」を感じた。
今回の2・13地震においても、同様の「ズレ」を実感しているという。
「私自身は夜も眠れないほど不安になり、体調不良に苦しんでいるのですが、町に出ると、普通に暮らしている人が多いですし、職場も通常営業しているので、私もなるべく普段どおりに働きに出ています。被害がそれほど大きくなかったせいか、ニュースを見ても地震の報道はほとんどありません。なんだか自分の感覚とズレているなと思っています。10年前もそうでしたが、『不安』を周囲に語ることをタブーとするような風潮があるように感じます」
同じく福島市内に住む40代女性のBさんも、13日に揺れが始まったとき、ドキドキして身体が動かなくなったという。
「リビングで書きものをしている最中に揺れを感じました。“またなの? もうやめて!”という気持ちでした」
3・11の際は子どもたちを連れて関東へ自主避難した。Bさんにとって「人生でいちばんつらい経験」である。
「まさか“同じことがもう一度起こる”とまでは思わないけれど、10年前の記憶が強くよみがえるのを止めることはできませんでした。とにかく“怖い!”のひと言でした」