世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)。日本は東京、大阪など10都府県で2度目の緊急事態宣言の真っただ中だ。昨年3月下旬には、小池百合子都知事が「夜の街への外出」を控えるよう呼びかけて夜の店を目の敵にしていたのは記憶に新しい。そして、同年5月下旬に集団感染(クラスター)が発生した新宿歌舞伎町のホストクラブは世間から強い批判を浴びた。
歌舞伎町近辺で勤務している会社員のAさん(30代)は、当時のことをこう振り返る。
「一度目の緊急事態宣言が解除された昨年7月。友人と会う約束をしていたのですが、直前になって『そういえばAの会社って歌舞伎町近いよね?』とLINEが来て、なんで今さらそんなこといってくるんだろうと思っていたら『もう少し落ち着いてから会おうよ』と言われました。職場が歌舞伎町に近いというだけで避けられたんだな、と思いました」
Aさんが言うように、昨年の緊急事態宣言前後の歌舞伎町は、以前のような活気はなく、東洋一の繁華街とは思えないほど閑散としていた。あれから約半年がたった“夜の街の今”に迫る。
休業中も給料の6割を支給する
ホワイトなホストクラブ
「現在は、マスク着用やマドラーの使い回し禁止など、感染対策に務めながら営業しています。一度目の緊急事態宣言のころは、店が開けられない日も多かったから、売り上げはゼロ。それでも従業員の給料や維持費の支払いはあったので、マイナスの日々が続きました。ですが、昨年秋ごろには例年の売り上げの7〜8割に戻っていました。国や都からの要請に反対しているわけではありません。公的な補助や援助ではまったく店の経営が成り立たないから、法律である風営法は順守しつつ、僕たちは仕事をしています。そもそも、そうしなければお店も雇用も維持できないんです」
そう話すのは、ホストクラブ『CANDYS HEAVEN』の代表を務める心之♂友也さん。「ホストジャーナリスト」という肩書も持ち、ホストクラブをはじめとする歌舞伎町の事情に詳しいコメンテーターとしても活動している。
現在、歌舞伎町を始め、ホストクラブは20時以降に開店する店が大半だ。
「昨年4月に従業員全員にPCR検査を受けさせたところ、数名に陽性反応が出たので、すぐに公表して20日間ほど休業しました。特に当時は情報が錯綜していたので、お客さんはもちろん、スタッフたちの命を最優先に考えました。僕たちは“接客サービス”を提供するのが仕事なので、むしろ『感染者がいるらしい』というウワサが広まるよりも、事実を明らかにして今後の対策を提示するほうがプラスに働くと考えたんです」
キャストの中には寮生活をしている者もいるため、感染者が出ると一気に感染が広がるリスクが高い。そのため、キャスト全員が陰性になるまで店を休業しなければならなかったという。
「当然、休業中の売り上げはゼロ。しかも、こちらの店はオープンして間もない状態だったので運営資金も潤沢ではありませんでした。家賃は出ていくものの、キャストのみんなには平均給与の6割以上の休業手当を支給しました。身銭を切りながら運営していました。ホストは店が開かなければ稼げない仕事なのに手当が出るなんて、ウチはすごいホワイト企業ですよね(笑)」
『CANDYS HEAVEN』と名付けた店は、いきなり地獄からのスタートとなってしまった。