「ただ、お客さんたちも、徐々に来てくれるようになって昨年8月以降は通常営業になりました。お客さんたちの熱い思いが伝わってきて、本当にうれしかったですね」
現在も、定期的にキャストのPCR検査をしながら営業を続けている。誕生日イベントの実施や、客の要請があれば近隣の飲食店から料理をデリバリーしてもらうなど、通常のサービスを提供している。
「ホストは通常どおり、指名のお客さんの隣に座ります。でもやはり近づきすぎることはないですし、ちゃんとマスクをしています。誕生日のイベントをするのは、歌手がライブ会場で歌うとか野球選手が球場で野球をするのと同じく、それがホストの“仕事”ですからね。もちろん続けています。
あと、来てくれるお客さんたちには『ここにいると寂しくない』って言ってくれる人が多いんですね。これは僕の持論ですけど、寂しくて将来が不安で自殺してしまうくらいなら、歌舞伎町のホストクラブに来てほしいですよ」
飲食店をひとまとめにする
無意味な対策
その一方で、心之さんは昨年広がった“歌舞伎町ホスト叩き”について、思うところがあるという。
「僕は個人的に、歌舞伎町は世間一般とは違う独自の社会を形成していると思っていましたが、今回の件でそのイメージがさらに強まりましたね。昨年は全国的に歌舞伎町やホストクラブ叩きが過熱しましたが、直接怒鳴り込んでこられたり、貼り紙が張られたりといった、世間に存在するという“自粛警察”が関与してくるなんてことはありませんでした。
世間でホストクラブを叩いていた人たちは、結局僕たちのお客様でもなかったし、そもそも歌舞伎町とは無関係な人だったということなのではないでしょうか」
歌舞伎町はキャストも客も“ひとり暮らし”が多いのも特徴、と心之さん。重症化が懸念される高齢の家族と一緒に住んでいる客やキャストはかなり稀なので、たとえ感染しても経路が追えて歌舞伎町内で完結する可能性が高いという。
「歌舞伎町で生きている人の多くは、主に20代、30代で、生活圏は広げてもせいぜい新宿区内です。全国からやって来る人はいても、自分たちはあまり区外に行かないから、感染を広めている可能性は低いのではないでしょうか。それに、歌舞伎町内の感染の影響で死者が出た、という話は聞いたことがない。
それよりも経済活動がストップして経営者が苦しんだり、精神的に追い詰められて自殺者が出たりするリスクのほうがずっと高いです。僕は実際に働けない期間を経験して、歌舞伎町にとっては経済活動を止めるほうが死活問題だと感じました」
そして彼は、それぞれの地域や飲食店の業態に適した対策をする必要があるのでは、と自論を展開する。