動物たちに最後まで
幸せな一生を送らせてあげて
飼えなくなったときのことを想定しておくのも飼い主の責任だ。
1度飼ったのなら責任をもって最後まで面倒をみる、終生飼養が大前提。だが、それは「絶対に1人の飼い主が最後まで」というわけではない。
コロナ感染後に後遺症が続いてペットの世話ができずにネグレクト状態になってしまうことも。コロナや災害で失業し、ペットのエサどころか、自分の食事もままならなくなるケースもあるだろう。
「無理して飼い、生活が破綻することもあります。ですから、次にちゃんと幸せに飼ってくれる人に命をバトンタッチすることも大切なんです。どうか動物たちに最後まで幸せな一生を送らせてあげてください」(前出の町屋獣医師)
前述のようなやむをえない事情だけではない。
SNSの可愛い画像に感化され安易に飼う。飽きて世話がめんどくさい、と無関心になる無責任なケースだ。だが、飼育のストレスから虐待につながるなら次の飼い主を探したほうが動物も幸せだ。
手放す際は譲渡先や団体の施設を訪ね、動物が安心して過ごせる場所かなどを確認。譲る相手の身分証明書を確認するなど、細心の注意を払うことを心がけてほしい。譲渡先での虐待や多頭飼育につながることもあるからだ。
適切な世話をしてくれる人間がいない状態はペットの大きなストレスや心の傷になることを忘れてはいけない。
「世話をしてくれた人がいなくなり、劣悪な環境に置かれることは動物にとって不幸なことです」(前出・同)
ペットは孤独を癒してくれるおもちゃではない。同じ命だ。ペットを救えるのは飼い主しかいないのだ。
教えてくれたのは…
石井万寿美先生 『まねき猫ホスピタル』院長。Yahoo!などで動物に関する記事も執筆している
町屋奈先生 公益社団法人『日本動物福祉協会』調査員で獣医師。動物福祉の啓蒙活動のため、研修会などを開催
当山みどりさん フリーライター。国内外の被災地で支援活動に参加。防災関係の記事を多数執筆