「こうやって機能がマヒしちゃったら、ハイチ地震と同じになっちゃうよ!」
職員に怒鳴り散らす男性の姿も。被災者の限界が、刻一刻と近づいているようだ。
街に出ると、仙台市内はガソリン不足が深刻化していて、若林区に住む60代の運送会社で働く男性は、
「うちらは家もないんだよ。駅のほうに住んでいる人は、家はあるだろ。こっちの立場から言わせてもらえば、家があるだけでも恵まれてるんだから、ガソリンはウチらを優先させてくれたっていいんじゃない。みんな困ってるのはわかってるけどさ!」
と語気を荒らげていた。
車以外の交通も地震直後からマヒが続き、仙台駅は相変わらず閉鎖中で、駅前ロータリーには新潟行きのマイクロバスが3台。だが、すべてが満席になっている。ガソリンを諦めた人が、仙台脱出を試みているのだろうか。
「仙台での生活がいつ戻るかわからない。バスが出ているか問い合わせしたら、新潟行きがあるというので予約しました。しばらく新潟のホテルに泊まる予定です」(20歳の男女)
取材班もカメラマンが朝4時から仙台市内のガソリンスタンドに開店前から並んでいたが、すでに行列が。凍てつくような寒さの中、少しの燃料も無駄にできないため、どの車もエンジンを切っている。ようやく朝11時、ガソリンスタンドが動き出す。だが1台2000円分しか入れられない。車以外での行動を余儀なくされ、自転車店に向かうも、すでに売り切れてしまっていた。そのまま徒歩で行けるところまで行くことに。
サイレンが鳴る中、港へ向かった若者たち
地割れした道を通り、宮城野区・中野栄駅付近にたどり着くと、景色が一変する。埃にまみれた道路の両側には、津波で流された車が山になっていた。徒歩で通るのも困難なほど。これが本当に日本かと疑いたくなる光景だった。
すると、午前11時半過ぎに、突如として街が騒ぎ出す。パトカーと消防車のサイレンが鳴り響き、
「避難してください! 今すぐ避難をしてください!」
拡声器で叫んでいるが、何が起きたのか全くわからない。
「早く逃げるぞ! 高台に逃げるぞ!」
と住民がパニックに。車も渋滞となる。私たちは、見ず知らずの場所であるため逃げ場がわからない。
「高台はどこにあるんですか?」
近くにいた男性に聞くと、
「ここらには高台はないよ」
と答えた。辺りを見回すと、歩道橋に30人ほど避難していたが、さらにその先にある歩道橋はポキっと折れていた。これでは何とも心もとない。
近所の中野栄小学校に住民が避難しているというので向かうと、付近の公園で水をタンクに汲む3人の若者に出会った。
「僕たちが水や食料を届けようと。これから港近くの倉庫まで行って食料を集めて、避難所を回ります。津波警報? 津波が来たら終わりですね。でも誰かがやらなきゃいけませんから。港は地獄絵図で、遺体を見た人もいたそう」
そう言い残し、トラックで港へと向かって走り去った。