入院にかかるお金は1日平均2万円以上
頭に入れておくべきなのは入院・治療にかかる費用だけではない。入院・治療の医療費のみで見積もっていると、思わぬ出費に驚くことになるという。
例えば、入院中の食事代にはじまり、テレビや冷蔵庫の使用料、交通費、パジャマや着替え代、入浴に必要な石けんやタオルなど、自己負担の出費は何かとかさむ。
「この部分を見落としている人が少なくありません。医療費以外の費用は当然ながら健康保険などでは補填(ほてん)されないため、全額自己負担となります」
また、差額ベッド代も健康保険の適用外となる。
「差額ベッド代とは、希望して個室に入ったり、人数が少ない病室(1~4人部屋)に入ったときにかかる追加費用のことです」
【見落としがちな入院時の出費】
・差額ベッド代……7837~2440円/1日(1人部屋~4人部屋の場合)
・食事代……1380円/1日(条件や病状によって異なる)
・テレビ視聴料……300~400円/1日
・病衣とタオルのレンタル代……400~500円/1日
・ICU(集中治療室)に入った場合……12万~14万円/1日(健康保険適用)
・医療用ウイッグ……12万円
・乳がん手術後専用ブラジャー……3000~1万円
(※金額は一例です)
すべて踏まえると、入院したときに必要になる1日あたりの自己負担費用は平均2万3300円に達し、もっとも多い価格帯は1万~1万5000円(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」令和元年度)。思いのほか、たくさんのお金がかかることがわかるだろう。
「加えて、病気になって仕事を休職や退職せざるをえないこともあるので、それによって生じる収入減も考えておかなければなりません。パートやアルバイトなどは生活の維持がより大変です。さらに、家事、育児、介護を担う人が病気になれば、それらを何らかの形で代替しなければなりません。家事代行や育児サポート、介護サービスにお金がかかるのです」
40〜50代は健康の過信が落とし穴
医療費+医療費以外の出費で病気の値段は予想以上の金額になる。病気にかかるリスクが高く、重症化しやすい高齢者ほど万全な蓄えを必要とするが、その一方、意外な落とし穴となっているのが40~50代だという。
「この世代は仕事や子育て、親の介護に追われ、自身の健康を後回しにしがちです。そのため、大きな病気のサインを見逃したり、気づかずに重症化してから発見されるケースが少なくありません。ですから40代、50代の方こそ身体のことをきちんと考え、蓄えもしっかりするようにしましょう。備えあれば憂いなしです」
※明日公開の後編『病気のお金の減らし方「高額な立て替えを避ける裏ワザ」「保険の見直しポイント」』につづく
(取材・文/百瀬康司)
《PROFILE》
御喜千代 ◎ジョンソン・エンド・ジョンソンで外科、産婦人科を中心に新しい手術の開発やトレーニングを担う。コミュニケーション業界に転じてからも医療面の活動に尽力。初の著書『病気の値段がわかる本』(アスコム)がある。