女性芸人に注目が集まっている。ここ数年、いわゆるお笑い第7世代の台頭、6.5世代の巻き返し、千鳥やかまいたちといった関西芸人の全国区での活躍など、テレビで活動する芸人の世界が活性化してきた。そんな中、女性の芸人を見る機会もまた増えている格好だ。
数々のバラエティー番組で、女性芸人に関する企画を放送。中でも“売れっ子”の筆頭が、ぼる塾だ。
ぼる塾の誕生、1人は産休へ
よく知られているように、ぼる塾は4人組のカルテットである。現在は、あんり、きりやはるか、田辺智加の3人がテレビに出ることが多いが、4人目のメンバーとして育休中の酒寄希望がいる。
正式な結成は2019年12月。あんりときりやが組んでいた「しんぼる」と、田辺と酒寄が組んでいた「猫塾」という2つのコンビが合体する形で結成された。
ぼる塾を結成する直前、2組はそれぞれ課題を抱えていたという。しんぼるは2人での活動に手詰まりを感じ、解散直前の状態だった。猫塾も、ネタ作りを主に担っていた酒寄が妊娠のため産休に入る中、田辺は1人での活動に苦悩していた。そんな中、あんり・きりや・田辺の3人で急きょやったトリオ漫才に手応えを感じていた彼女たちは、しんぼる側から声をかける形で合流したらしい。
多くの芸人と同じく、ぼる塾が最初に注目されたのもネタだった。作家によるアドバイスを受けながら練り上げられたとされる彼女たちの漫才は、しんぼるがそれまでやってきた漫才の形、つまり、あんりがきりやに否定的にツッコむ関係に、あんりが田辺を肯定する関係をプラスしたものだという。
三者関係となった彼女たちの漫才は立体的に立ち上がり、それまでにないリズムを刻みはじめた。正式結成前のユニットとして2019年のM-1グランプリ予選に参加していた彼女たちは、その独特な漫才で強いインパクトを放ち関係者の目に留まった。
現在、ぼる塾がバラエティー番組に出演する際、前に出る機会が多いのは力強いツッコミを武器とするあんりだ。しかし、ぼる塾をぼる塾たらしめている存在として、田辺を無視することはできないだろう。あんり→田辺というラインが付け加わることで、ぼる塾の漫才はハネたのだ。ここではそんな田辺に注目してみたい。
ギャル→芸人になった「田辺さん」
田辺をテレビで見ていて気づくのは、誰もが彼女のことを「田辺さん」と呼んでいることだ。相方たちはもちろんのこと、ダウンタウンやウッチャンナンチャン、東野幸治や有吉弘行といった先輩芸人たちも、彼女のことをこぞって「田辺さん」と呼ぶ。ぼる塾の中でも年長者の田辺。メンバーからは「田辺さん」と敬称をつけて呼ばれているのだが、そんな彼女たちの関係性にいつの間にか周囲も巻き込まれている格好だ。
そんな田辺の経歴は起伏に富んでいる。芸人になる前は、東京ディズニーリゾートの土産店で働いていた彼女。しかし、20代後半でギャルに憧れた彼女は、渋谷の109で働きたいと思い突然仕事を辞めた。109は年齢制限で勤めることができなかったものの、渋谷に通って10歳近く年下の女の子たちと付き合い始めたという。
「芸人になる前にギャルをやっていたんですよ。渋谷のギャルっていうのはごはんを食べないんですよ。ホントに食べなくって、アイスがごはんなんですよ。一緒にいるグループの子がごはんを食べないから、あら、私食べたらヤバいのかなって、食べなくなってきた」(『又吉直樹のヘウレーカ!』NHK Eテレ、2020年11月18日)