練習環境の違いでも、カナダのほうがいいと梅田さん。
「ジャンプの練習をするためのハーネス(身体をつり上げる補助器具)がないスケートリンクが日本には多いんです。使える人も少ない。4回転アクセルの練習を確実に、安全に行うためにはカナダに行ったほうが間違いはないです」
4回転アクセルの完成のためには、カナダでの練習が欠かせない。そして、『天と地と』の世界観を自分のものにすることも重要な課題だ。
「『天と地と』はもともとはNHK大河ドラマのオープニング曲です。羽生さんは主人公・上杉謙信の価値観や人生観が自分に合っていると思ったそう。全日本の本番前では曲の主人公になりきることを強くイメージしたあまり、涙を流していました」(前出・スケート連盟関係者、以下同)
義将として名高い謙信に、自分を重ね合わせているのだ。
「私利私欲を捨て、義のために戦いを続け、そして勝ち続けた上杉謙信。葛藤や不安がありつつも全日本選手権に出場し、世界選手権で五輪の枠取りのために全力を尽くした自らの姿を投影しているのではないでしょうか」
石坂浩二が羽生にエール
1969年に放映された大河ドラマ『天と地と』で上杉謙信を演じたのは石坂浩二だ。
「石坂さんはこの曲が使われたことを知って歓喜。スポーツ紙のインタビューで、“謙信の心を胸に 翔べ!”と羽生選手にエールを送りました。“選曲自体が立ち向かうメッセージになる”と話しています」(前出・スポーツ紙記者)
石坂の思いを知ることは、羽生にとっても力となる。
「青年期から晩年までを演じた石坂さんは、謙信の感情の起伏や心境の変化を演技を通じて深く理解しているでしょう。氷上で演技をする羽生選手も、石坂さんの“魂のレッスン”を受け、その経験を参考にしたい、石坂さんと話がしたいと熱望していると思います」(同・スポーツ紙記者)
羽生は以前にも演者からアドバイスを受けたことがある。
「平昌五輪で映画『陰陽師』の劇中曲『SEIMEI』を使った際、安倍晴明を演じた野村萬斎さんと話をしています。野村さんは劇中の晴明の決めポーズのポイントについてアドバイスしたそうですよ」(同・スポーツ紙記者)
石坂から受け継いだ謙信の魂を胸に、北京で翔べ!