第3位にランクインした『時間ですよ』は銭湯が舞台のホームドラマで、主演は森光子さん。従業員役の堺正章が、毎回「おかみさーん、時間ですよ!」と叫ぶシーンが有名だ。
1965年の単発ドラマ放送を皮切りにシリーズ化されたが、橋田さんが脚本に参加したのは最初の数話のみ。脚本の世界観を大切にしたい橋田さんと、アドリブなどを取り入れる演出家の久世光彦さんとのあいだで衝突があったとされる。
「屋根の上で、浅田美代子と堺正章が歌うシーンが思い出される」(愛知県・主婦)
「貧乏でも、がんばれば明るい日々が見えてくるように感じた時代でした」(島根県・公務員)などの声が寄せられた。
6位にランクインした、NHKの朝ドラ『春よ、来い』は、ほかの作品とは少し異なり、橋田さんの自伝的ドラマとなっている。主人公の女性が戦争を乗り越えて大学進学のために上京し、脚本家として成功するまでの半生が描かれた。
「橋田さんは大学中退後、1949年に松竹に入社しています。当時の映画業界は男尊女卑が激しく、女性脚本家として認められるまで、並大抵ではなかったでしょう。橋田さんが男社会のなかでいかに努力してきたかがよくわかる作品です」
コロナ禍の家族がテーマの新作
橋田さんは90歳を越えてもなお作品を書き続け、コロナ禍で生きる家族をテーマに、新しい物語を考えていたという。
『おしん』でも『渡鬼』でも、数々の大河ドラマでも、時代や背景は違えど、橋田さんが一貫して描いてきたのは「女性の自立」だった。何度転んでも、失敗しても、立ち上がる。苦境のなか、自分を失わずに前を向く主人公の姿が、見る者に力をくれた。
橋田さんはドラマを通し、自分の生涯をかけて、「一緒にがんばろう!」と、日本の女性たちにエールを送り続けていたのかもしれない。