一方的にクビにされた
居酒屋でホール業務のパートをしています。「赤字続きで従業員を減らすので、今月で辞めて」と言われました。5年も働いてきたのに仕方ないですか。
→要件を満たさない解雇は無効
パートなど非正規社員の契約期間途中のリストラ(整理解雇)は、業績が悪化したからといっても安易に認められない。やむをえない事情がない限り、解雇権の乱用で解雇は無効となる(労働契約法16条)。
「やむをえない事情は判例に基づき、リストラの4つの要件として決まっています。労働審判や裁判も、この要件から有効性を判断します」
リストラの4要件は、(1)人員整理の必要性があること、(2)解雇回避の努力を尽くしたこと、(3)解雇者の選定が合理的であること、(4)人員整理手続きが妥当であること。
「会社側の対応でよく問題視されるのが(2)。例えば、人員整理する前に希望退職者の募集をかける、幹部社員の手当や給与を下げるなどの措置を指します。そういった努力なくして従業員のリストラを先行するのは認められません」
4要件を満たさない不当な解雇だとわかったら、「みんなのユニオン」のような個人で加入できる労働組合、労働基準監督署、弁護士などに相談するのが望ましい。
なお有期のパートや契約社員が更新を繰り返して勤続期間が5年を超えると、契約期間満了前に無期労働契約への転換を会社側に申し込むことで契約期間の制限がなくなる(労働契約法18条)。
「この無期転換ルールは『形成権』と呼ばれる非常に強い権利で、会社側にその旨を通知するだけで効果が発生し相手は受け入れざるをえません。有期契約期間を重ねて5年以上働いた場合は、雇用を安定させる策として頭に入れておくとよいでしょう」
仕事中にケガをした
ビルメンテナンスの会社でパートの清掃員をしています。転んで足を骨折しました。治療費はかかるし、治るまで仕事もできず困っています。
→通勤中や仕事上のケガは労災が使える
正規・非正規を問わず仕事中の事故でケガをしたら労災(労働災害)と認定され、労災保険から治療費など一定の補償を受け取ることが可能だ。労災の要件は「業務上の負傷、疾病、傷害、死亡」が該当し、通勤中の事故も同様の対象になる。
「ただし原則、会社に届け出ている通勤経路内での事故のみです。基本的に寄り道中は対象外ですが、生活必需品を購入するためにスーパーに立ち寄った際の事故で労災認定された判例もあります」
仕事中や通勤中に事故に遭ったら、すぐ会社に連絡し、業務上の負傷であることを伝えよう。状況をメモや録音で残しておくと、書類作りで役立ったり、もめたときの証拠にもなる。そのうえで労働基準監督署に申請する。
労災の主な補償には、(1)療養補償給付(ケガや病気の治療費など)、(2)休業補償給付(休業した場合の給料補償)、(3)障害補償給付(事故により障害が残った場合の補償)、(4)遺族補償給付(亡くなった場合の遺族への補償)がある。
「正社員ではないからといって労災の補償請求をあきらめる必要はないのです」
(取材・文/百瀬康司)