大人が成長する過程を描く
山崎さんは、そういった、父親が成長する物語で忘れられない作品が2つあるという。『僕と彼女と彼女の生きる道』(フジテレビ系)と、『弟の夫』(NHK)だ。
「『僕と〜』は、草なぎ剛さん演じる主人公が家庭を顧みない銀行員だったのですが、妻が出て行ったため、娘の面倒をひとりで見るようになる。
当初はまったく自分本位で冷徹な男だったのですが、娘の家庭教師の助言を聞き入れるようになり、本当に大切なものは何かに気づくんです」
『弟の夫』は、両親が残したマンションの管理を生業としながら小学生の娘をひとりで育てている男性(演:佐藤隆太)のもとに、カナダで亡くなった双子の弟の同性婚相手が訪ねてやってくるところから始まる。
「その“弟の夫”との交流と、まだ大人のような固定概念を持たない自身の娘の言動を通じて、主人公はさまざまな偏見を持っていた自分に気づきます。
気づいて初めて、長年わだかまりとなっていた亡くなった弟への複雑な思いも変わります。
2つとも、とても素晴らしい作品でしたね」(山崎さん)
子どもの成長だけでなく、大人の成長も見ることができるのも、シングルファーザーものの大きな魅力のひとつなのだろう。
娘がまるで恋人のように!?
ほかにも、シングルファーザーものでよくあるパターンといえば、「娘が父親の妻のように支える」というものがある。
実際に、父を支える娘というのが主軸にある作品『タクシードライバーの推理日誌』(テレビ朝日系)も手がけた竹山さんによると、
「テレ朝系のドラマは、シチュエーションが決まっていて、さまざまな脚本家たちがそれをベースにして物語を書く、というパターンが多い。そういう場合、特徴的なシチュエーションは主人公を際立たせるためには有効な方法」だという。
『タクシードライバー〜』しかり、『はぐれ刑事純情派』しかり、主人公の周りの女性たちは、理解者だらけだったもの。
「女性にも人気のシリーズでしたが、男性にも人気があったのは、そのあたりが要因ではないでしょうか。ドラマって、ファンタジーであればあるほど根強いファンもつきますから」(山崎さん)
ファンタジーといえば、こんな作品も。
「中山美穂と後藤久美子という、当時の大人気アイドルを起用した『ママはアイドル!』(TBS系)もシングルファーザーものでしたが、父親を恋人のように見ていた娘が、いきなりやってきた後妻にライバル心を抱くという、コメディーでした。
同じくTBS系で、田村正和さんが父親で小泉今日子さんが娘役という『パパとなっちゃん』という作品は、美男美女の恋人同士にも見えなくないふたりの、父と娘にしてはありえないほどの仲のよさが展開される話でした。
どちらも、登場人物がみんな美男美女だったから成立し、受け入れられたのであって、現実だったら、周囲の人間は対応に困ってしまいますよねえ(笑)」(竹山さん)
確かに、現実だったらちょっとありえないかもしれない……。