アスリートが「辞退」できない現実
五輪競技を取材するスポーツジャーナリストは「アスリートを責めるのはやめてほしい」と擁護する。
「それこそ大半の選手がスポーツに人生をかけています。記録も去ることながら、結果を出すことは彼らの生活にも直結するわけで、特に東京五輪という“晴れ舞台”でメダルを狙える選手、全盛期を迎えている選手は是が非でも出場したいのが本音でしょう。アスリートにとって、五輪でのメダル獲得は人生における大きな目標であることは理解してほしい」
また引退後は“元オリンピアン”、“元メダリスト”という肩書きで、国や公共団体、また組織委員会などが主催するスポーツイベントにも呼ばれることもある。さらにタレントやキャスターへの転身を考えているのならば、スポンサーや広告代理店の意に反することはできないといった事情もある。
「それにマイナースポーツの場合、五輪は競技発展の場でもあります。そこで出場選手が辞退や中止などと“声が上げた”とすれば、他の選手や所属する連盟にも迷惑がかかるおそれがある。ある種、閉鎖的な世界で生きているのも事実で、アスリート自らが辞退を申し出るにはあまりにもリスクが大きい。彼らも非常に弱い立場にいるのです。
そういう意味では、彼らも、のらりくらりと対応を先伸ばして責任をなすりつけようとする政治家たちの犠牲者。批判の矛先まで“アスリートファースト”にはしないでほしいですよ」(前出・スポーツジャーナリスト)
五輪が開催する方向で進んでいる今、アスリートたちができるのは本番で100%のパフォーマンスを披露し、国民に勇気と元気を与えるために粛々と準備を整えることだけだ。