預貯金感覚は禁物!
実際の相談例としては次のようなものがある。
「定期預金として自分のお金1000万円と、妻のお金600万円を預けたつもりだった。最近になって書類をよく見たら、外貨建て生命保険に加入していることになっていた。気づけば夫婦で200万円の損失に」(80代男性)
「80代の父が契約者となっている1000万円一括払いの外貨建て生命保険の証券が届いた。父は“保険に入ったつもりはない”と言うが、保険会社は“契約は成立している”として解約に応じない」
特に目立つのが、なじみの銀行員にすすめられて外貨建て生命保険に大金をつぎ込んでしまうケース。国民生活センター相談情報部の神辺寛之さんが指摘する。
「定期預金が満期になった、退職金を受け取ったなどのタイミングで担当者に外貨建て生命保険をすすめられると、長く付き合っている相手なので信頼し、安心して契約してしまうようです」
預貯金感覚で契約してしまい、あとで資産価値が目減りしていることに気づいてあわてる……というわけだ。
「相談件数の半分近くが70代以上の高齢者で、しかも平均契約金額が1000万円前後と高額です。高齢者に十分な説明のないまま額面割れリスクのある商品を売るなど、消費者のニーズに合った提案がなされていないケースもみられます」(神辺さん)
高齢者が狙われる理由
高齢者が狙われやすい理由について、かつては保険の営業マンとして活躍し、現在は『オフィス・バトン保険相談室』で消費者の相談に応じる後田亨さんは、こう話す。
「若い人より高齢者のほうがお金を持っているし、セールストークを聞くだけの時間もあります。また、金融商品の中身を調べず、担当者の好感度で契約を決めてしまう人が多いからでしょうね」
そもそも外貨建て生命保険とは、米ドルなど、外国の通貨で保険料の支払いや保険金の受け取りを行う生命保険のこと。
現在、日本円の普通預金金利は0・001%。銀行に100万円を1年預けても利息(税引き前)はたったの10円。年金も少ないし、これからの生活を考えると、不安でたまらない。なんとか有利にお金を増やす方法はないものか……。
そんな高齢者の心理をつく形で外貨建て生命保険が販売されているのだ。