別の近所の女性によると、ビニール袋はいつも輪ゴムで縛られ中身が漏れないようになっていたという。

「最初は栄養ドリンクか何かかな? と思ったんです。でも尿とわかってからは、犬の散歩中は近づかないよう距離を取りました」(同女性)

 近所に住む主婦は「私が見たのは濃い麦茶のような色だった。日数の経った尿だったのかもしれない」と思い出したくもない記憶をたどる。

 自宅近くに投棄されたことのある自営業の女性は、苦々しげな表情でこう打ち明ける。

「隣接地の茂みにいつの間にか4袋もまとめて捨てられていたんですよ。本当に気持ちわるかった。夫がゴム手袋をして処理するしかなく、派出所にも報告しました」

 本誌が確認できた投棄場所は半径約80メートル以内の計6か所。いずれも今年に入ってからの目撃情報だ。

 このエリア内に施設を持つ企業が今年1月に〈周辺に汚物を捨てないでください。見つけしだい通報します〉などと張り紙で警告したが、それでも犯行は止まらなかった。

 同社の担当者は、

人間の尿か、動物の尿かわかりませんでした。容疑者逮捕のタイミングで張り紙は外しました」

 と振り返る。

現場周辺では不法投棄を警告する張り紙が至るところに
現場周辺では不法投棄を警告する張り紙が至るところに
【写真】尿ラッシュに見舞われた現場の様子は──

なぜビニール袋を使ったのか

 男が逮捕されて以降、類似案件の発生は止まった。

 なぜ、男は車を停めてトイレに駆け込まなかったのか。仮に車内でもよおしたのだとすれば、どうしてビニール袋にためこんだのか。なぜ警告を無視して狭い範囲内で投棄を繰り返したのか──。

 男の自宅は木造2階建てのアパート。トイレ、風呂付きで家賃は月4万円台。投棄現場から直線距離で約13キロ離れており、道路の混み具合にもよるが車でおよそ30~50分かかる。

 供述通り、「トイレに行くのが面倒で」ビニール袋にためこんでいたのだとしても、自宅に持ち帰ってトイレに流せばいいだけの話だ。

 仕事中のトイレに困りやすい長距離トラックの運転手に話を聞いた。

「へぇ~。そんな事件があったんですか。運転中にトイレに立ち寄れないときは車を停め、ここだけの話、カーテンで隠して後ろの席でペットボトルにおしっこをします。会社からコンプライアンス遵守を厳しく言われているので、立ち小便をすることはありません。量がたまったら排水溝などに流します。容疑者がどんな職業かわからないけれども、車の中でおしっこをためるのはペットボトルのほうが適していると思う。ビニール袋では破れそうでこわい」(50代の運転手)

 非常用トイレとしてペットボトルの空容器を常備する同僚運転手は少なくないという。

 犯行の背景や動機の詳しい解明、余罪などは捜査の進展を待つほかないが、容疑者逮捕の知らせは周辺住民を安堵させている。男にどんな事情があったにせよ、非常識な犯行が住民を必要以上に怖がらせたことは間違いない。