「残された時間をただ過ごすより、目的を持ってほしい。何でもいいと思うんです。私にとっては、それが歌うことになりますけど。目的を持って進むことで1日1日が真剣勝負になるし、一生懸命生きている感じがすごくしてくる。そういうことが伝わるといいなと思っています」
50年超の芸歴で初めて映画に主演
1969年に名曲『夜明けのスキャット』でデビューし、歌に演技と50年を超える芸能生活で輝き続ける由紀さおり。『ブルーヘブンを君に』で、驚くことに映画初主演を飾る。
地方創生ムービー2・0プロジェクトの第3弾となる今作の舞台は岐阜県。
「主役というか軸になる役をやらせていただいたんですけれど、私の中での主役は岐阜です。岐阜は2012年の『第67回ぎふ清流国体(国民体育大会)』で今の上皇さま、上皇后さまの前で『ふるさと』を歌わせていただいてからのご縁なんです。
新幹線の岐阜羽島駅から岐阜市内に入ると川が見えて。空が広いし、水はきれいだし、緑がいっぱいなの。岐阜の人に、どうしてこんなに水がきれいなのか聞いたら、“鵜飼の鵜が食べる鮎は、きれいな水じゃないと育たないことを知っているから川を汚さないんです”と言われて、なるほどと思いました。その川沿いを孫役でボイメン(BOYS AND MEN)の小林豊くんとバイクで走るシーンも出てくるんですよ」
共感したのは夢を実現する強さ
今作で由紀が演じているのは、世界初の青いバラ『ブルーヘブン』を生み出したバラ育種家・河本純子さんをモデルにした園芸家の鷺坂冬子。原作、脚本も手がけた秦建日子監督から「どうしても」とオファーがあったという。
「役作りで監督からのリクエストは全然ないの(笑)。余命を宣告されるということが背景にありながらも、結構、おちゃめな役。夢の実現を貫く強さというんでしょうかね、そういうものはとても共感することができました」
突然の腹痛に襲われた冬子は、がんが再発し余命半年のステージ4と宣告されてしまう。主治医から治療に専念することをすすめられるが、ある決意をする。それは、初恋の青年が挑戦したことでもある、ハンググライダーで池田山から飛ぶことだった。
「(東海最大級の美しさを誇る夜景スポットでもある)池田山から見える街並みが素晴らしいの。初めて行ったとき、(見晴らし)台があるのだけれど、そこで思わず“うわ~”って大きな声を出してしまって(笑)。監督から“危ないですよ”と言われてしまうくらい、すごく気持ちがよかった」
がんに身体をむしばまれていく冬子にとって筋力や体力を使うハンググライダーは決して簡単な挑戦ではない。はたして、彼女は空を飛ぶことができるのか。そして、胸にしまい続けてきた淡い初恋の結末も解き明かされていく。