知っておきたい意味の違い【社会編】その1
●「いじめ」と「いじり」
文部科学省の最新統計によれば、いじめの認知件数(2019年度)は約61万件を超えて過去最多を更新した。
いじめが起きたとき、加害者側は「いじめていたのではなく、相手がいじられキャラだった」「冗談だった」などと言い、被害者側の認識と食い違うことが珍しくない。
ジャーナリストの渋井哲也さんは次のように語る。
「文科省のいじめの定義は、被害を受けている側が心身の苦痛を感じているかどうかを判断基準としています。つまり、加害者側が“いじめていたのではなく、いじりだった”と否定しても関係なく、被害者の受け止め方を重視しているのです」
渋井さんによれば、学校でのいじめ問題を取材すると、学校側が「いじめか、いじりか、悪ふざけか」の違いにこだわるあまり、いじめと認めるまで時間がかかるケースが少なくないという。文科省の定義に基づき、被害者の訴えや心情に寄り添う対応が学校側には求められている。
「芸人が見せるいじりは、あくまでそういう芸。いじる側といじられる側、双方の合意があるから成り立つのです」
●「体罰」と「しつけ」
子どもへの体罰を禁じた児童虐待防止法が改正され、今年4月で1年。しつけという名のもとに体罰を行ったら、罰せられるようになった。
「例えば学校教育法では、授業中に廊下に立たせたり、正座や同じ体勢を長時間とらせたりする行為も体罰になります。しかし改正法では、体罰とは何かという規定が明らかにされていません。どこまでがしつけで、どこからが体罰なのかあいまいです」
と、渋井さんは指摘。
体罰としつけの境界線はどこにあるのだろうか?
「児童虐待に当たるかどうかがヒントになると思います。今回の法改正は、野田市女児虐待死事件など、親から子への虐待事件が増えたことで体罰禁止へとつながりました。大人が子どもへ殴る蹴るなどの暴力を1度でも振るえば、身体的虐待になります」
ちなみに、『国連子どもの権利委員会』は体罰の定義を具体的に提示、「どんなに軽いものであっても、子どもが苦痛や不快感を覚えるものは禁止すべきだ」としている。暴言や笑いものにするなど、尊厳を傷つける行為も体罰として禁じている。
●「テレワーク」と「リモートワーク」
通勤地獄から解放される人もいれば、非正規だけ出勤を強制されるなど新たな格差も……。そんなテレワークとリモートワークの違いって!?
「両方とも会社以外の場所、自宅やサテライトオフィスなどで仕事を行うという意味。厳密に言うと、どちらの言葉を使っても間違いではありません」(渋井さん、以下同)
テレワークはtere=離れた場所+work=働く、リモートワークはremote=遠隔+work=働く、との英単語を組み合わせた造語。その歴史は1970年代のアメリカに遡る。大気汚染が問題になる中、オフィスへ出勤せず在宅勤務する働き方が導入されたという。日本では'84年、日本電気(現・NEC)が東京・吉祥寺にサテライトオフィスを設けたのが最初とされている。
「国はテレワークの呼び方で統一しています。リモートワークという言葉は、とりわけIT関係やフリーランスで働いている人の間で使われる傾向にあるようです」