愛は簡単に手に入らない

 食道がんになったから、家族のところに戻る。そのため愛人契約を解消すると申し出てきた。

「別れるのはうれしいけど、別れもパパの都合だと思うと悔しくて、診断書を見せてくれと頼みました」

 診断書には間違いなく『食道がん』と記載されていた。愛人契約は4年で終了した。

 ホテルのスイートや高級旅館に宿泊したり、高級飲食店で食事、ゴルフ帰りに温泉旅行、年2回は海外旅行と贅沢な時間を過ごしたにもかかわらず、美優さんにはパパとの思い出がほとんどないという。

「お金ではなく愛情でつながる関係を求めるべきでした」

 と、反省する美優さん。結婚詐欺が教訓にならなかったのは残念だが、男に絶望した女性が安易に愛情を信じられなくなることも理解できる。愛は簡単に手に入らないのだから──。


寄稿/夏目かをる:コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマンの取材をもとに恋愛や婚活、結婚をテーマに執筆活動を行い、自身の難病克服後に医療ライターとしても活躍