コロナで新たなハラスメント
最近は、何でもかんでも「それ、ハラスメントです!」とやたらに叫ぶ人がいて、「ハラハラ」も問題になりつつあるという。ハラスメントハラスメント…もはや言葉遊びか。あれ、脳内に「まえだまえだ」が出てきちゃった。航基と旺志郎、どっちもいいよねぇ。
そして、目下のところ大きな問題としては「コロハラ」(コロナハラスメント)に「ワクハラ」(ワクチンハラスメント)である。
コロハラは定義が揺れているが、見ている限り2パターンあると思われる。
まず、感染者への差別。感染した人に対する「罪のお仕着せ」。あってはならないことなのに、感染した芸能人や有名人に謝罪を要求する空気。いや、まずは治療でしょ。怖いってば。治癒した人であっても「居づらさやいたたまれなさ」を感じてしまうという。感染を理由に雇い止めや解雇などがあるとしたら、言語道断ではないか。
逆に、旅行や外食、酒宴をしている人、休業せず営業している店に対する誹謗中傷というパターンもある。これも一種のコロハラであり、自粛警察でもあり。
そして、主に医療従事者の間で起きているのが、ワクハラだそうだ。「ワクチンを強制的に打てと言われる」「ワクチンを打たなければ職場に来るな」ということらしい。退職を迫られた人もいるそう。もちろん、ワクチンに対して懸念を抱いている人はいる。いろいろな事例を見ているだろうし、「接種すれば感染しない」ではないため、人それぞれの主張と権利がある。それなのに強制するのはハラスメントだという考え方だ。
「ワクハラ」と聞いて、他人事ではないと震撼した。今後拡大していきそうな気がするから。今は医療従事者と高齢者、基礎疾患のある人が接種している状況だが、いずれ全員に接種券が到着する。
「ワクチン打った?」がすでに日常会話になりつつある中で、打った人と打っていない人、自らの意志で打たない選択をした人の間に軋轢が生まれると予測できる。「非接種の人は入場お断り!」とか出てくるかもしれない。それが仕事や人間関係に悪影響を及ぼすとしたら……まったくコロナってやつは! 偏見、差別、分断、対立……生み出すものがえげつなさすぎる。
誰だってハラスメントの被害者にも加害者にもなりたくない。ならばどうしたらいいのか。まずはミニマムなところから。意外とハラスメントの根っこは家庭にあったりもする。家族だから、親子だから、夫婦だから、きょうだいだからと言って、自分と同じ考えとは限らない。圧をかけたり、強制や強要をしていないか? 自分以外の人の「権利」を侵したり奪っていないか? と考えてみたらよいと思う。
「今の発言はイヤな気分になった」とか「イヤな気分になる人がいると思うよ」と言い合えるかどうか。直球でもやんわりでも、お互いにハラスメントを意識できるかどうか。家庭をもたない人は、恋人でも友人でも知人でもゲーム仲間でもいい。自分以外の人、必須だよね。
さて、ワクチン接種券がきたら、どうするか。速攻受けに行きたい人、ちょっと様子見の人、断固として受けたくない人、受けたいのに受けられない人、受けたくないが仕方なく受けさせられる人。それぞれの主張と考え方と選択肢がある。それが権利だ。
さて。私は、というと、ワクチンは打ちたい人優先で、様子見かな。『鬼滅の刃』は数話観た。『呪術廻戦』は観てない。『愛の不時着』は面白かった! 『梨泰院クラス』は観てない。
吉田 潮(よしだ・うしお)
1972年生まれ、千葉県船橋市出身。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか』(KKベストセラーズ)などがある。