誰もがなりうるから対策も急がれる
孤独死も多頭飼育も自宅のゴミ屋敷化も誰もがなりうる可能性があるのだ。
「コロナ禍で増えてます。1年以上ぶりに帰ったら実家はゴミ屋敷、猫も多頭飼いに。親の認知症も進んでいた。また、久しぶりに友達を訪ねたら孤独死していたという話も少なくない」(川崎さん)
動物を飼っていなかった人でも要注意。例えば、エサをあげていた野良猫を飼うことになったケース。避妊去勢手術がされておらず増えてしまい、多頭飼育崩壊に陥り生活も逼迫することは珍しくない。
それらを防ぐため、当事者を孤立させないよう動物愛護の観点だけでなく、福祉や地域との連携が今後より一層強く求められている。
「私たち、保護動物に携わる人間でも年をとれば正常な判断ができなくなることは十分にありえます。常に自分たちのキャパを確認し、身の丈に合った活動をすることが大切です」(河野さん)
前出の高江洲さんは昨年12月、一般社団法人『全国生前整理サポートセンター』を立ち上げた。
「死後事務委任契約を行う団体です。単身世帯でも生前に自分の最後を決めることは非常に大切です。契約者が亡くなったあとに残された財産の手続きや動物の譲渡などを親族の代わりに行います」(高江洲さん、以下同)
スタッフは生前、亡くなったあとの希望を聞き、公証人役場にて契約者の遺言執行者になることを申請する。
「寂しさをまぎらわすためだけの存在として動物を飼うならそれは飼い主のエゴ。ペットにも命がある。家族のように暮らしているなら飼い主は親。先に亡くなれば何もできない子どもを残すようなもの。飼い主さんが望む形で動物の面倒を見ます」
譲り先が決まっていなければその先も探す。さらに、契約者には電話をしたり、訪問することもある。
「高齢化、単身世帯の増加は著しく、孤独死は増えることが想定されています。ですが私たちは孤独死をなくしたい。契約者に家族や友達がいなくても私たちがつながり、最期を見送ります」
自分の死後、葬儀や埋葬はもちろん残された荷物、自宅、ペット……心配事は多い。だが、それらがクリアになれば人生も動物との時間もより楽しめるのだ。
死ななくてもいい命を道連れにすることも防げる。
高江洲さんは訴える。
「ペットと過ごす時間もいつか途切れることを考えてください。長く生きていてほしいと願うならその先のことを考えてほしい」
2019年、民間調査によるとその前年に孤独死した人は全国で2万7000人超。多頭飼育の苦情は全国で2000件超寄せられている──。
高江洲敦さん
孤独死、自殺、事件現場の特殊清掃や原状回復、遺品整理を請け負う特殊清掃人。『A&Tコーポレーション』代表。現在は後進への技術指導を中心に行っている
飯田有紀子さん
NPO法人『群馬わんにゃんネットワーク』理事長。殺処分ゼロではなく保健所、愛護センターに収容される犬や猫をゼロにするためさまざまな問題解決に取り組んでいる
川崎亜希子さん
公益社団法人『日本動物福祉協会』栃木支部長。長年、動物虐待問題に取り組み、一時保護の必要性や悪質な飼い主への飼育禁止についても訴えている
河野治子さん
一般社団法人『動物虐待インターベンション』代表理事。神奈川県の動物愛護推進員。虐待現場などからの動物の保護や行政に対しても提言を行う