事故の2日後には首に20センチ以上のボルトを埋め込む大手術が行われた。
日を追うごとにその現実は重くのしかかってくるように。
「徐々に自分が“一生歩けないんだ”とわかってきました。落ち込むよりも、“死にたい”と思うようになってきましたね。娘を抱き上げることもできない、妻と浜辺を歩けない、大好きなラーメンをカウンターで食べることもできない……1秒にも満たないほんの一瞬の事故で失ったものの大きさに絶望しました」
大声で“殺してくれ!”と寝言を放ち、巡回の看護師に起こされたこともあった。
「恥ずかしながら妻の前でも“元の生活に戻りたい”と泣きながら訴えたことも……」
そんな真大さんに妻・まみこさんはケロッとした表情でこう言ったという。
“ま、大丈夫だよ!”
まみこさんは語る。
「よく“強いね”と言われるけど、私は自分のことをものすごく能天気な人間だと思っているんです」
ポジティブな妻に支えられて
事故の2週間後、再生医療の治療を受けるため一家は北海道に引っ越した。その際、まみこさんは、「一度は北海道に住んでみたかったし、超ラッキー!」と思ったのだとか。
超楽観的で突き抜けるようなまみこさんの明るさが、真大さんを支え、絶望の淵から引き上げたのだ。
そしてもうひとつ、真大さんにとって励みとなったのが、ユーチューブの存在だ。
「仕事仲間が面会に来てくれているときは、明るく振る舞えていました。けど病室で一人になると、あまりの不安に押し潰されそうになってしまって……。そんなときに見ていたのが同じような障がいがある人たちの動画でした」(真大さん、以下同)
過酷な状況下においても、なお前向きに生きる人たちの姿に勇気づけられた。
「きっとユーチューブがなかったら沈んだままだったかもしれない。事故前から動画配信には興味があったのですが、改めて僕も多くの人に勇気を与えられるような動画を作っていこうと思ったんです」
そう強く決意した真大さん。約半年にわたる北海道での治療を終え、千葉県内に引っ越したタイミングで、本格的に動画制作に取り組んだ。
「最近は、家族で東京ディズニーシーに出かける様子や、娘と遊ぶ様子も投稿していますが、中でも妻が登場する動画の反響は大きいですね。『夫が障害者になった妻の壮絶な1日ルーティン』は、630万回以上も再生されました」