他人に見せることを躊躇(ちゅうちょ)しがちな日常の生活や苦しい胸の内を赤裸々に配信。視聴者は介護の現状を知る一方でいつも笑顔が絶えない家族の姿に胸を打たれる。
しかし当のまみこさんは、「たくさんの人に見てもらえてうれしい反面、美談としてもてはやされるのは、違和感があって……」と遠慮がち。それには訳があった。
「不定期ながらポートレートモデルとしても活動しているんですが、写真を見た人から“あれ、この人ってユーチューバーの妻で、苦労人だよね”と思われたくないんです」
事故後「仲がよくなった」
つい世間は「糟糠の妻」のイメージを押しつけがちだが、介護も生活の一部。まみこさんは、介護者ではなくあくまで「まみこさん」なのだ。
まみこさんは夫婦関係の変化を次のように述べる。
「おかしな話ですが、事故後、仲がよくなったんです」
ふたりの出会いは、'16年2月、行きつけの居酒屋だった。
'18年4月に婚姻届を提出、3か月後には娘が生まれた。
「とにかく真大さんは、アクティブな人。仕事も忙しく、家も空けがちなので、家事や育児はワンオペ状態。ケンカも絶えなかった(苦笑)。しかし事故後は、必然的に一緒に過ごす時間が増えて、夫婦仲もよくなっていったんです」
真大さんも自らを省みつつ、次のように語る。
「それまでは仕事が最優先でした。死に直面してからは、残りの人生は自分にとって大切な人と過ごしたいと考えるようになりましたね。脊髄を損傷すると、普通の人よりも平均寿命は短いといわれているので、なおさらです」
また介護をしてくれる家族以外にも、他者の優しさをより感じられるようになった。
「知らない人でも僕が車いすで困っていたら、すぐに声をかけてくれますね。また介護士さんは、排便の処置も嫌な顔ひとつせず、丁寧にやってくれる。なのに“介護士の収入は低いから自分に自信が持てない”なんて言うので、聞いていて切なくなりました」
家族のサポート、人の優しさ、そして同じ障がいのある人の動画に支えられた真大さん。次に誰かを支えるため、新たなビジネスを画策中だ。
「人手不足の介護施設とヘルパーさんを仲介するマッチングサービスを作りました。介護業界は人材不足が深刻。しかも現場で働く介護士の賃金は低い。そんな問題を解決しながら、介護業界を変えていきたい。そして動画を通して、同じように障がいのある人の力にもなりたいですね」
この障がいは使命──真大さんは語る。
いつどこで誰が事故に遭い、ときに障がいを負うかわからない。冒頭の動画には次のような一節もある。
《当たり前のことなんてこの世に存在しないんだ》
絶望の淵に立ってもなおも明るく、力強く進み続ける真大さんの言葉は重い。
Twitter:@kasshiiiiiii
Youtube:「かしわせチャンネル」
(取材・文/アケミン)