目次
Page 1
ー 高級老人ホームの実態 ー 高額なぶん安心・安全で介護などのサービスも
Page 2
ー 居住者組織のマウントが見え隠れ
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ー 高級とはいえ無意味な設備も
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ー 住人同士のトラブルは一般施設と変わらず

 

人生の最期を過ごす場所のひとつが老人ホーム。中でも、設備もサービスも上質な「超高級老人ホーム」はお金があれば入りたいと思う人も少なくないだろう。ところが、その実態を取材したところ、価格に到底見合わない「悪質」ともいえる施設もあるようで…

「高級なのは表面的な姿に過ぎません。豪華な施設から高齢者のユートピアと捉えられがちですが、理想と現実はかけ離れています」

 こう語るのはノンフィクションライターの甚野博則さん。『週刊文春』に10年以上在籍し、老人ホームや介護の実情を記事にした経験を持ち、現在も業界の取材を続ける人物だ。

高級老人ホームの実態

「高級老人ホームは設備などのハード面こそ豪華で充実しているものの、ソフト面のサービスのほうは一般的な老人ホームとほとんど変わらない。ホームページやパンフレットの情報とは異なるサービスを提供するなど悪徳な施設もあります。実態を知るべきでしょう」(甚野さん、以下同)

 甚野さんは最新著書『ルポ超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)において、“超”高級老人ホームと称される全国の施設を訪問および潜入取材。多くの入居者やスタッフから話を聞き、真の姿を明らかにしている。

 はたしてそこはどんな場所で、どんな人が住み、どんな生活を送っているのか。ベールに包まれている超高級老人ホームの実態を見ていこう。

高額なぶん安心・安全で介護などのサービスも

 超高級老人ホームに明確な基準はない。故に甚野さんは該当施設を「入居一時金だけで数千万円から数億円。加えて月額数十万円の利用料がかかる」という定義のもと、現場に足を運んでいる。

「取材した中で入居一時金の最高額は約4億7000万円になります。東京の高級住宅地にある全国屈指の超高級老人ホームです」

 館内には、レストランやバー、理美容室、ホール、各種娯楽ルームを完備するのが通例。そのほかスカイラウンジや天然温泉を備えるなど、一流ホテル並みだ。

 施設での暮らしは安心・安全のため、介護などのサービスがつく。介護でいえばスタッフのサポートや緊急コール対応を通例とし、24時間体制で医療スタッフが待機するところもあるという。

「こうした設備、サービスを享受できることを前提とした入居一時金と月額利用料は居住スペースによって異なります。先の入居一時金約4億7000万円の施設でいえば、約147平方メートルの夫婦2人部屋に対する金額です。月額利用料は1日3食が付き、電気代を除く諸経費を含めると約60万円かかります」