年を重ねるにつれ、育ててくれた親への感謝の気持ちは募るもの。多くの人は、親孝行をしたいと思いながらも、現実には「できていない」と感じていることが多い。その理由には、「離れて暮らしているから」「何をしたらいいかわからない」「忙しい」といった声が挙がるという。
親との時間は有限、孝行するなら“今”
「家庭や仕事の都合でなかなか親と会えない人も、年末年始の帰省時は、親孝行ができる絶好のタイミングです」
と話すのは、40年以上にわたり介護・福祉の仕事に携わってきたケアマネジャーの田中克典さん。
「普段から電話やメールでコミュニケーションをとることも大事ですが、やはり顔を見せることで親は安心し、喜ぶものです。直接会うからこそ、できることはたくさんあるので、今回の帰省を機会に、感謝の思いを形にして“恩返し”を考えてみてはどうでしょう」(田中さん、以下同)
恩返しというと、何か立派なことをしなきゃと構えてしまう人もいるかもしれないが、
田中さんは、実例を挙げて、こうアドバイスする。
「両親の金婚式に、ハワイ旅行をプレゼントしようと計画していた女性がいました。ところが旅行の半年前に父親が大腿骨頸部を骨折し、介護施設に入所。残念ながらハワイ旅行は実現できませんでした。『父が元気なうちに近くの温泉にでも連れていってあげればよかった』と悔やんでいた娘さんの言葉が忘れられません。
今の70~80代は元気で、自立生活を維持できている人も多いですが、年を重ねれば誰もが身体や脳の機能が衰えていきます。親の老いは確実に進行していくもの。ですので、恩返しは『いつか』ではなく、思い立った『今』実行することが最高のタイミング。ハワイ旅行といった大きなプレゼントより、今の自分にできる“小さな恩返し”を積み重ねることのほうが、実行しやすく、親の幸せにもつながるのです」