また、「不登校は不幸じゃない」の言葉どおり、学校に行かない=何もしないというわけでもない。今夏には、元プロボクサーの亀田興毅が開催する『亀田興業』でのエキシビションマッチへ出場予定だ。
「たしかに、ゆたぼんは学校で体験できることを体験できないかもしれません。ですが、絶対に学校では体験できないことを体験している。不登校の子どもたちを集めてお泊まり会をするなど、友達をつくれるようにもしています」
そう幸也さんは、理解を求める。
毒親ではなく親バカ、強制的に命じない
一方で気になるのは、学校に通わないことで学力をどう補うかだ。否定的意見の多くを占めるのがこの点で、学力がないことで子どもの将来への選択肢が狭まるのでは、と危惧する声は大きい。小学校を卒業した後、宣言どおり彼は不登校のままだ。
「今はネットもあり、多様な学び方ができます。勉強に関しても、YouTubeや『スタディサプリ』などを使って、本人が勉強したいときに勉強しています」
と幸也さんは説明するが、義務教育と異なる高校以降を考えるとどうだろうか?自らの人生の指針を本格的に考え始める、多感な時期だ。
「彼が中学校を卒業する年齢に達した時点で、どんな考えを持っているか。そこで、きちんと向き合うことだと思っています。学びたいのか働きたいのか、僕自身、中卒で大人になってから学びたいと思い、独学で高卒認定試験に合格した。彼が学びたいと思うのであれば、その環境をサポートします。YouTubeを続けたい、ビジネスを始めたい……、そのときに考えている気持ちを尊重したい」
もし、「何もしたくない。ニートになりたい」と言い出したらどうします?少し意地悪な質問をすると─。
「それは困るかもしれない」と笑いながらも、
「ニートなりにお金を稼ぐ生活はできないのかと提案すると思います。ニートなんだから働けという言い方はせずに、生活できるニートになればいいのではないかなって」
そんなニートがいてたまるか!とツッコミたくなるが、世の中には“プロ奢(おご)ラレヤー”や“レンタルなんもしない人”など、働かずともお金を稼ぐ新人類も登場している。
ましてや、前例のないことをしているゆたぼんくんともなれば、既存の価値観で測ってはいけないだろう。実際、中学1年生でひとりで沖縄から飛行機に乗って移動したり、大人に対して物おじせずにコミュニケーションができたりする姿は、目を見張るものがある。
「勉強をしたい、社会に出たい。そういった子どもの“やりたい”という意志が大前提として必要で、最良のタイミングで親として何ができるか。強制的にあれをやれ、これをやりなさい、と子どもに言うようなことはしようと思わないです」
話を聞いていると、毒親どころか、むしろ親バカ─。そう伝えると、「そうかもしれない」と幸也さんは笑う。
「サポートし続けた結果、慢心してしまったら……きっと彼の周りから人が離れていくと思うんですね。そうなったら痛い思いをして学ぶしかない。失敗させてあげるのも、後悔させてあげるのも、生きていくうえでは大事なことだと思います。
調子に乗って、周りへのリスペクトを忘れ、人が周りから離れていけば後悔するでしょう。そこから自分のダメな点に気づくことができれば、また成長する。もちろん、彼がくじけたとき、その問題とどう向き合うのかを伝えることも親の役割だと思います」
先日、自身らを誹謗中傷してきたネットユーザー40人以上から謝罪を受けたことを、幸也さんは明かした。
「理由を聞いたところ“自分は嫌々学校に行っていたのに自由に楽しく過ごしているゆたぼんが許せない” “俺も苦しんでいるんだからお前も苦しめ”といった、嫉妬心から書き込んだという人もいました」
どんな理由であれ、誹謗中傷は決して許されるものではない。一方で、ゆたぼんくんのような“出る杭(くい)”に対する羨望(せんぼう)が嫉妬となり、誰かを傷つけないと気がすまないような人が増えているのだとしたら根は深い。
先日、『古い政党から国民を守る党』(旧・NHKから国民を守る党)から次期衆議院議員選挙への出馬を表明した幸也さん。
「小中学生の不登校は年々増加しています。不登校の理由も、いじめだけではなく、多様化していて、学校という場所に合わない子どもが増えてきています。かつては学校しか学びの場はなかったですが、今はそうではない。自分たちが身をもって体感していることを伝え、学校以外にもさまざまな学びの機会があることを提示していきたい」
くしくも、コロナ禍によって学校へ行くことに疑問を覚えている子どもが増えている。親がどのように子どもと向き合うか─。出すぎた杭から学ぶこともあるはずだ。
なかむら・ゆきや 大阪府生まれ。心理カウンセラーとしてLINEや電話、対面でカウンセリングを行う。YouTubeチャンネル『少年革命家ゆたぼん』(登録者数14.5万人)を配信するYouTuber・ゆたぼんのパパとしても知られる。
〈取材・文/我妻アヅ子〉