夜中に隣から「助けて」と女性の叫び声が
本当にある物件の話。
「住人が孤独死し、体液が染みていたことから床を張り替えた物件がありました。なのにその後も人の形のシミが床に浮き出てきて、掃除しても張り替えても浮き出てくるとか……。にわかには信じがたい現象は実際にあります」
入居者が替わるたびに同じようなクレームが入る物件もある。
「僕が不動産会社に勤務していたころの話です」
担当するマンションのある部屋に住む男性から相談の連絡が入った。
「夜中に隣から女性の“助けて”って声が聞こえる、というクレームでした。ですが隣は男性のひとり暮らし……」
そこは地方出身者が集まる派遣会社の寮。慣れない土地で故郷に帰れない寂しさや仕事のつらさから精神を患い、幻聴が聞こえるようになったのではと推測された。だが、クレームが入るのはその部屋の住人から。
「その後も数人続きました。その部屋の噂が広まってほかの部屋の住人も怖がるようになり、住む人がいなくなった。数年後、その建物は取り壊されました」
叫び声の正体はいまだにわかっていない──。
建物を取り壊すような事態になれば大家としてもたまったものではない。
物件で人が亡くなった場合、通常ではリフォームや特殊清掃業者による清掃が行われ次の人に貸されるが……。
「実はそうでもないんです。
事故物件になる部屋の99%はワンルームや1K。しかも建物が古く家賃が安い物件であれば、そもそも大家さんにあまり収入がないことが多い。費用をかけたリフォームはせずに、そのまま人に貸すこともあるんです」
あろうことか「孤独死していた浴槽を簡易な清掃のみで貸す」物件やお祓いや供養がされていない物件もある。
「以前、身寄りがない認知症の高齢者が孤独死し、2週間後に発見された事故物件を撮影しに訪れたときのことです。そこは住人が亡くなったときのままで、ゴミや排泄物まで残されていました……。清掃業者すら入れずに部屋ごと封鎖されていたんです」
あまりの悲惨さに動画にはできず物件を後にしたという。
事件後、なんの手も加えられず封鎖されている部屋は少なくないという。
いわくつきの部屋にはろくに供養もされず、志半ばで亡くなった人々の念、時に怨念のようなものがとどまっているのかもしれない。