悲しみに耐えるのは逆効果
だが小池都知事をはじめ、人前に出ることが多い著名人はペットを亡くしたあとも元気な姿で表舞台に立っている。無理やりにでも自分を奮い立たせているのだろうか。
「一般の私たちでも仕事や学校などつらくても外に出なければならない状況は同じ。家から1歩出ればスイッチが入り、悲しみから一時的に離れられる。1日中考えているより外に出ていたほうが救われるという声もあるんです」
ただ、帰り道や玄関を開けた瞬間に愛するわが子がいないという現実に直面し、絶望感が襲ってくる。そんな悲しみから逃れるために別のことに没頭する人もいる。
冒頭の小池都知事の会見の言葉にはそうした思いもあったのだろうか──。
「一時的に何かに逃げたくなるのは自然な感情だと思います。ですが、そのときは気が紛れても悲しみの根本がなくなるわけではありません。ペットの死と向き合うことで初めて第一歩が踏み出せる」
では、そこから這い上がるためにはどうしたらいいのか。
「思いっきり悲しみ、泣くことが癒しになります。周囲の反応などを気にして、悲しみに耐えるのは逆効果。さらにストレスがかかるんです」
絶望している飼い主を励ますため、周囲の人はつい“次の子を飼ったら?”なんて言葉をかけがち。人によっては、ペットを失った直後にはそうは思えなくても、寂しさなどからもう一度ペットと暮らしたいと思うことがある。
だが、次に直面するのは高齢という壁だ。
「自分の死後を考えると飼いたいけど迎えられない。そのジレンマに悩む高齢の飼い主は多いんです。その後のことを熟考してペットを迎え入れることが肝心なのです」
タレントの小柳ルミ子もその葛藤の末、新たに保護犬を家族に迎え入れたことを自らのブログ内で明かしていた。
「誰でも最愛の子を亡くせば傷つき、生きるだけで必死。でもペットロスの悲しみを通して、動物が無条件に与えてくれていた愛や思い出を振り返ることができるんです」
愛するペットを亡くした小池都知事。目の前の課題をすべて片づけたとき初めてソウちゃんの死と向き合う時間が持て、本当の意味で立ち直れるのかもしれない──。
■これまでにペットを亡くした著名人
小柳ルミ子(犬)
秋野暢子(犬)
キンタロー。(犬)
杉本彩(犬・猫)
上沼恵美子(犬)
中川翔子(猫)
松居直美(犬)
柴咲コウ(猫)
西川史子(犬)
渡辺えり(犬)
折原みと(犬)
横尾忠則(猫)
安倍晋三前首相(犬)
バイデン米大統領(犬)
※関係者への取材を基に編集部で抜粋
ペットロスカウンセリングサロンcher ange主宰。自らもペットロスの経験があり、日本ペットロス協会で学び、ボランティアののち'13年に同サロンを立ちあげた。現在は対面だけでなく、電話相談にもあたる