中国での絶大な人気
今も人気は根強く、このコメントにもわずか1日で500万以上の「いいね!」がついたほど。ただ、こうした中国での好感度も離婚には災いした。台湾での嫌中感情を刺激し、彼女が悪者扱いされる要因のひとつとなったからだ。
それはさておき、彼女と日本人の関係はなぜ変わったのか。「泣き虫愛ちゃん」として世に出たころは、いわば天才子役みたいな存在で、そこから五輪ヒロインへと成長。テニス選手・錦織圭との初ロマンスではちょっと羽目をはずした感じだったが、ファンは「こんなに大きくなっちゃって」と微笑ましく見守った。
しかし、離婚の引き金になったロマンスは不倫。いまや日本でご法度というべき行為をしたことにより、彼女のイメージは暴落した。なまじ、可愛かった子ども時代が覚えられているから、そのギャップも大きいわけだ。
そこで思い出すのが、今から25年くらい前、元将棋棋士の林葉直子を取材したときのこと。彼女は、自分の波瀾万丈な半生を振り返りながら、
「卓球の愛ちゃんがかわいそう。昔の自分みたいで。不幸になりそうな気がする」
と言ったのである。
林葉もまた、親に幼いころから将棋を仕込まれ、天才美少女棋士として人気者に。CMに出たり、本を出したりしたが、不倫でミソをつけ、転落のきっかけになった。林葉の転落に比べれば、福原の不幸はまだ序の口にも思えるものの、似た境遇で育った者にしかわからない何かがあるのだろう。
ただ、日本人の心には「泣き虫愛ちゃん」の記憶も残っている。だから、会見を開き、大泣きすれば、一度くらいなら通用して好感度を回復できるかもしれない。いや、無理か。彼女はこんなに大きくなっちゃったのだから。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。