熱中症対策は水やお茶が正解

「汗をかくと体内の水分が失われ、脱水症になります。特に血液の中の水分が減るため、血圧が下がりすぎれば倦怠や意識朦朧の原因になります。そのため、なにより大事なのは水分の補給です」

 また、脱水症になると汗を出して身体の温度を下げることができず、身体に熱がこもって熱中症になるという。

「普段は1日に1・5~2Lの水分補給の必要がありますが、夏に外で身体を動かしているときはそれより多く、水やお茶をとるよう心がけましょう。また、例えば、激しい運動などをして、1時間で急激に2~3Lも汗をかくような場合は適切な塩分摂取が必要になります。普通に生活していたり、ちょっと運動するぐらいでは塩分は必要ありません」

 熱中症予防の原則は、きちんと食事をとり、水分補給をしっかりして、身体を冷やすことだ。また、熱中症対策にスポーツドリンクを飲む人も少なくないが、これは適切だろうか。

「スポーツドリンクに含まれる塩分は、実は塩分補給をうたっている塩入りの清涼飲料水とほとんど同じなので要注意です」

 しかもスポーツドリンクは糖分も多いので二重に注意が必要だという。

「スポーツドリンクは甘じょっぱいのでのどが渇き、ついつい飲み続けてしまうため、知らず知らずのうちに結構な量を飲んでいることが多いです。夏場にスポーツドリンクを飲んで糖尿病が悪化する患者さんは多いのです。熱中症の対策としては、やはり水やお茶が適切です」

 熱中症にならないようにとよかれと思ってやっていることが結果的に、高血圧や糖尿病、心不全や脳卒中につながるのでは本末転倒だ。今年の夏からは“おいしい熱中症対策”ではなく“適切な熱中症対策”を心がけたいものだ。

日本人はWHO推奨量の2倍も塩分をとっている!

 WHOは塩の摂取量を成人は1日5g未満にすべきとしているが、日本人は成人男性が平均10.9g、成人女性が平均9.3gの食塩を摂取している。

出典 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査の概要」より

専門医がすすめる補給すべきもの

〜NG〜

・塩あめ
・塩タブレット
・塩入りドリンク
・スポーツドリンク

〜OK〜

・水 
・お茶

※心臓病や腎臓病のある人は水分のとりすぎに注意が必要なので、主治医にご相談ください。

 教えてくれた人……日下美穂先生 ●日下医院院長。専門は高血圧、循環器系の生活習慣病、腎臓病。広島県呉市で減塩活動に取り組む。共著に『魔女の幸せ100年レシピ 本当に美味しい減塩レシピ教えます』(ソルコンクラブ)。

〈取材・文/山田 恵〉