【実例 3】不倫相手には渡さない!

離婚は絶対にしてやらない──。妻の嫉妬が渦巻く家庭内別居夫婦

 2人の子どもの子育てが一段落した川村裕子さん(仮名・47歳)は、7歳年上の代理店勤務の夫の同窓会恋愛を知って、ショックを受けた。

「出会ったころからずっと優しい人でした。育児にも家事にも協力的で、満点パパだったのに……」

 結婚前は負けず嫌いでバリキャリだった裕子さん。穏やかな性格の夫のおかげで、勝ち気さがあまり出なくなったという。

「子育てが楽しくて、ママ友との人間関係もうまくいっていました。パン屋さんのパートの仕事にもそれなりに居場所を感じていて。子どもたちが独立したら、パパ(夫)とゆっくり温泉巡りができるかなと老後の生活も楽しみにしていたんです

 ところが2年前から、夫は土日も「休日出勤」と朝から出かけることが増えた。

「思い返すと、そのタイミングで彼の高校の同窓会があったんです。そのとき、帰ってきた夫がものすごくご機嫌だったことを思い出して、もしかしたらとスマホを覗くと、同窓会で再会した女性と不倫をしていることがわかったんです」

 夫と交際している女性の存在を知った裕子さんは頭に血が上り、夫に女性との関係を問いただした。最初は否定していた夫だったが、裕子さんが女性とのLINEのやりとりを覗いたことを伝えると、あっさりと関係を認めた。

「しかも夫は、“定年になったら退職金を全部差し出すから、離婚してくれ”と懇願するんです。頭が真っ白になりました」

 相手の女性が小規模だが会社の経営者だったことも、裕子さんの逆鱗に触れた。

「私はキャリアを捨てて、妻として、母として、家族のために尽くしてきたのに。つらいし、やるせないです」

 裕子さんは愛する夫が自分を捨て、不倫相手との将来を選ぶのが許せないのだろう。

「夫は話し合いを望んでいますが、離婚に応じる気はありません」

 たとえこれまでの生活が戻ってこなくても、家族として過ごした時間を大切にしたいと、裕子さんは繰り返し口にする。その姿はどこか物悲しい。

取材・文/夏目かをる:コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマンの取材をもとに恋愛や婚活、結婚をテーマに執筆活動を。自身の難病克服後に医療ライターとしても活躍。