自宅隔離で夫婦の不仲が決定的に

「本当に大変だったんです!」と萌美さんはため息をつきますが、1月中旬、夫の同僚が新型コロナウイルスに感染。たまたま隣の席を使っていた夫は保健所から濃厚接触者に認定され、会社から2週間の自宅待機を命じられたのです。

 まず仕事の面で夫が今までどおりに行うことができたのはリモートの打ち合わせだけ。顧客の自宅など直接、訪ねることになっていた予定はすべて白紙に。2週間より先の日程で再度、調整せざるを得なくなり、関係先に謝るばかり。また出社しなければできない仕事はほかの同僚に頼むしかなく、引き継ぎの連絡でまた頭を下げなければなりませんでした。

 次に家庭の面ですが、勤務先や保健所から命じられた自宅待機の仕様は非感染者のときのリモートワークと比べ、明らかに厳しいものでした。「どうしても外出しなければならない場合を除き、家の中にいてほしい」と。できれば外出を控えてほしい」という自粛要請とは明らかに声色が違っていたため、夫はとても外出できない状況でした。缶詰め状態の夫に代わり、今まで夫がやっていた食材の買い出し、ATMでの現金出金、そして車のガソリン給油などは萌美さんが代わるしかなかったのです。

 しかも、家の中での会話、食事、そしてスキンシップもはばかられる状況。平日、出社する萌美さんと、在宅のままの夫。ますます接点が減っていき、お互いに相手が何を考えているのかわからず、疑心暗鬼に陥る日々を送るしかありませんでした。萌美さんは「自宅隔離されていた当時のことを思い出して! また同じ生活に戻りたいの?」と訴えかけたのですが……。

 夫は「これまで1年半もかからなかったんだから、俺は感染しない体質なんだろ」と開き直る始末。挙句の果てには右手を左右に揺らし、「煙たい」のポーズをとり、ワクチン未接種者である萌美さんを馬鹿にしたのです。結局、夫は予定どおり、キャンプへ出かけていったそうです。

「もう終わりだと思いました。コロナが落ち着いたら離婚しようと思っています」

 萌美さんは涙声で言いますが、当初はコロナウイルスの蔓延がひと段落し、感染の危険が下がったら、不妊治療を再開するつもりだったそうです。しかし、今回の件で夫の人間性に疑問符がつきました。

 もし、運よく子どもを授かっても、夫は子どもの父親としてふさわしいのか。子どものために仮面夫婦を続けるのかと考えたとき、夫との間の子どもが欲しいとは思えなくなったとのこと。さらに一緒に子どもを育てるという目標がなければ、これから夫と人生をともにしていく気になれないと言うのです。筆者は「両親の不仲でお子さんを不幸にする可能性を考えると、それも仕方がありませんね」と背中を押したのです。

 今回、萌美さん夫婦ワクチンをめぐる喧嘩により、夫婦関係にピリオドを打ちました。もともと喧嘩が多かった二人ではありますが、今回の件がなければ、今でも結婚生活を続けていたのではないか。そう思うと筆者は胸が痛みます。もし、萌美さんと同じような状況に直面した場合、どのように判断すればいいのでしょうか? ワクチン接種による夫婦喧嘩が起きたとき、離婚すべきかどうかのチェックリストを作成したので、参考にしてください。

離婚すべきかどうかのチェックリスト

■1.ワクチン接種に対する姿勢に疑問点はなかったか?

 ワクチン接種について夫婦の間で話し合い、意見を言い、結論を出すことができたのならいいですが、話が通じず、何を考えているか分からず、喧嘩してばかりだとしたら……。今後、ワクチン以外の問題に直面した場合、夫婦の関係は悪化の一途を辿るのは明白です。

■2.危機的な状況でも配偶者への信頼は変わらないか?

 危機的な状況に陥ると、建前ではなく本音が出てきて、本性が丸出しになるもの。例えば、ワクチン接種の順番の横入り、接種後の自粛無視、フェイクニュースの入手による混乱など。配偶者の醜い部分を目の当りにした場合、それでも信用できますか?

■3.次の問題が起こったとき、配偶者と行動をともにしたいか?

 ワクチンを接種したら終わりではなく、別の問題が発生する可能性があります。例えば、接種の効果がなく、変異株に感染し、症状が現れるなどです。このような問題に直面したとき、配偶者の協力を得るより、自分ひとりで対処したほうが楽だと思いませんか?

■4.限りある人生で配偶者は最良のパートナーか?

 今回のコロナウイルスで命を失った親戚や友人、同僚はいますか? いなくても亡くなった有名人のことは知っているでしょう。ワクチン接種により、自分が感染し、重症化し、死んでしまうリスクは大幅に下がったものの、他人の死を目の当りにして、「人生には限りがあること」を再認識した人も多いでしょう。今後の人生をどのように過ごしたいのかを再考したとき、隣にいるのは誰がいいでしょうか?

 ぜひこの機会に考えてみてください。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/