自分はお釈迦様として居心地のいい極楽で蓮池を眺めながら人の生死を決めるということなのか……。そんな“神様目線の差別発言”に、僕はこれまで会話をしてきた何百人ものホームレスのことを思い出した。
誰もがホームレスになる可能性がある
「俺は昔、人殺したことある」と自慢する人もいれば、
「スーパーの万引で食べている」
「稼いだ金は全部、酒」
「元暴力団員だった。今も覚せい剤をやっている」
という言語道断な発言もよく聞いたし、包丁を振り回されたことや、無理やりキスされたこともあった。
だが公的な福祉は、そういう人にも差別せず行わなければならない。中には、どう見ても“精神疾患”や“知的な障がい”を抱えていると思われる人もいる。そういう人は、本人の努力で解決できる状態ではない。
福祉の網の目からこぼれ落ちてしまった人であり、積極的に保護する必要があるだろう。罪を犯して刑務所に入っている人間だって、食事は摂り、布団で寝ている。
今の日本において、貧窮者が犯罪者と同じレベルの生活を、享受することすら許さないと言うのだろうか?
「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしい」
そんなDaiGo氏の呼びかけに応えてみながそう望んだら、生活保護制度が打ち切られ、野宿生活をすると逮捕される時代がくるかもしれない。
餓死者が増え、自殺者が増え、犯罪が増えて世の中が地獄になっても、別に自分は成功しているから関係ないと本当に言えるのだろうか。
ほとんどのホームレスは、なりたくてホームレスになったわけではないのだ。誰もが同じ立場になる可能性があるのだから――。
取材・文/村田らむ
1972年、愛知県名古屋市生まれ。ライター兼イラストレーター、漫画家、カメラマン。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海など、「いったらそこにいる・ある」をテーマとし、ホームレス取材は20年を超える。潜入・体験取材が得意で、著書に『ホームレス消滅』(幻冬舎)、『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『樹海考』(晶文社)、丸山ゴンザレスとの共著に『危険地帯潜入調査報告書』(竹書房)がある。